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第二十四話「沈没船の捜索作戦」

 ブラッド・ピーコック号は帆を全開に広げ、潮流にのって海の上を疾走していた。

 船首でアモイは手すりに寄りかかって船の行く先の海を眺める。

 隣ではラナを中心にしてイヴァリスとリンが駄弁り合っている。


「この船、すっごく速いのね」

「私も定期連絡船になら乗ったことがありますが、こんなに風を切るように疾走してなかったです」

「……速いね……」

「海賊船だからねぇ。足の遅さが死に直結する海の戦いで生き抜いてきた船だもの。

 それにベラ船長の風と海流の読みも的確で……」


 アモイはしゃべりかけたまま口を止めた。

 そして泣きそうな顔をしてイヴァリスとリンを振り返る。


「えっと……、カルフンガリアで王様に言われたのって、確かリエポートで船長アマードに会えだっけ?」

「あっ……」

「あっ……」


 船の中から両手に一杯のリンゴを抱えたスヴェンが現れ、大声で4人に呼びかける。


「おぉ~~い! 皆いい物貰って来たよ!」


 アモイ達に一つづつリンゴを手渡しする。


「なんか、サンドラ・キャットとの闘いの話をせがまれたから聞かせてたらさ、ベラ船長に気に入られちゃったみたい。

 このリンゴを皆に持って行ってあげてくれだって。

 赤猫旅団の幹部の中でもサンドラ・キャットは主に海賊として活動してたみたいで、ずっと敵対してたんだって。

 セルバゼイでの戦いを聞いてて爆笑してたよ。

 ん? どうしたの? 皆暗い顔しちゃって」


「スヴェンくん……」

「ん?」


「オイラ達皆、乗る船間違えちゃった」



 操舵室でダミアンが船を操作しながら、隣で腕組みをして遠くを見据えるベラ船長に話しかける。


「それにしてもベラ様、リエポートの酒場で腕組みして黙り込んで居たのは、となりの机を囲んでた連中の話を聞いてたからですね?」

「そうだ。こんな美味そうなシノギの話を自慢げに大声で、あんな場所で語るなんざ馬鹿な奴らだ。

 たしかアマード船長とか言ったか……」


「もしもアモイ達が気づいたらどうします?」

「どうもこうもない。予定通りやって貰うだけだ。奴らはこの船に乗ってしまったのだからな」





 船は航海を続け、三日目の夜。

 ついにデスクレセント島の西へと到達した。

 ベラ船長とスヴェン達一行は船内部の広間で机を囲んでいた。

 ベラが横の天井から壁にいくつも伸びた銅製のパイプの一つ、その先端のホルンのようにうねって開いた口に叫ぶ。


「周囲の様子はどうだ? デスクレセント島は見えるか?」


 パイプは船の中央マストの天辺の見張り台にまで続いている。

 くぐもった声で見張りの船員からの応答が聞こえる。


「見えますぜ。明かりが幾つかついている。灯台の火もです。アンデッド達も灯台を利用するんですかね!?」

「よぅし、気づかれた様子があればすぐに知らせろ!」

「アイアイサー!」


 ベラ船長が机の自席に戻って座る。


「さて、いよいよ引き揚げ作業だ。

 ここはボトルの中にあった紙片が示す座標の真上。記述が正確であればここから見える範囲内にゴルガン・スペラが乗っていた船が沈没している。

 水深は100メートル。

 海は穏やかだが、ほぼ人間が潜れる限界を超えた深さだ。

 あと、この海域にはサメが一杯いる。

 人間の味をよぅく知っているサメがウジャウジャな。

 どうするね? トレジャーハンターご一行様よ」


 アモイが震えながら答える。


「こ、ここは一旦近くの……そう、ここからならカーグレイルが近い。カーグレイルの港に戻って、陸で休憩をはさみつつ策を考えるというのは……」

「駄目だ。今日引き上げる」


「そ、それでも……」

「お前はトレジャーハンター、なんとかするのがお前の仕事だろう?

 何も策が無ければお前の腰にロープを結び付けて、海に飛び込んで探してもらうという手なら私にも考え付くが?」

「ひぃぃ……」


 スヴェンが割り込んだ。


「ベラ船長、どうしてここの水深が100メートルだと分かったんですか?」

「錨を降ろした時の鎖の長さからだ」


「……この一帯の海底はどんな場所かご存知ですか? サンゴ礁とかです?」

「ここらの海底は大半が砂地、所々にむき出しの岩が生えてる感じだな」


「それならばこういうのはどうでしょう? 小舟を降ろしてから、皆で海底に届くほどの釣り糸を垂らしながら海を少しずつ進んで探るんです。

 もしも沈没船などがあれば何か手ごたえがあるはず」

「もし見つけたらどうやって引き上げる?」


「この船に石が幾つか積まれてますよね?」

「……それで?」


「僕がその石の塊を利用して魔法で動くゴーレムを作ってコントロールします。

 そのまま海底へと落として、沈没船や荷物にこの船から垂らしたロープを縛り付けて引き上げるんです」

「いいだろう。この船には6隻の小舟がある。それを海に降ろす」


「僕達にも手伝わせてください。僕とアモイさん、リン、イヴァリス、ラナさんで一隻の小舟に乗ります!」

「いや、レディ達にはこの船で待機してもらおう。

 ……坊や達が逃げ出さないようにね」


(気づかれてた……)


 ベラは立ち上がると広間に居た船員達に大声で指示を下す。


「聞いてたな? ありったけの釣り竿を用意して小舟を降ろせ! この一帯を捜索だ!」

「アイアイサー!」

「アイアイサー!」

「アイアイサー!」

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