第二十話「大型帆船ブラッド・ピーコック号」
「スヴェン君! 港だ。とにかく港へ向かうんだ!」
「……皆付いて来てくれ。このまま港へ向かう。僕が道を開く。リン、後ろのサポートを頼む」
「行くわよ!」
馬に乗りハルバードを振り回すスヴェンの背にラナがしっかりとしがみ付く。
スヴェンは右から、左からシミターを振り上げて襲い来るスケルトン達をハルバードで打ち砕きながらゆっくりと進んだ。
どのスケルトンも海底から上がって来たせいか、全身に海藻が絡みついて濡れ、中には目の窪みにシャコがうごめいているものまでいる。
「わっ、わっーー! こっち来たよ!」
慌ててアモイがイヴァリスの荷車の反対に回って隠れ、イヴァリスが赤いフランベルジュでスケルトンの剣をさばいた後、何度か攻撃を行い、リンが稲妻ボールの魔法で止めをさす。
アモイが怯えながらも感心する。
「イヴァリスちゃん、強いね。多分町のベテランの衛兵と互角にやりあえるよ。」
「アモイさん。後ろ」
「ひぃぃ!」
馬上で戦いながら後ろをチラ見していたスヴェンはイヴァリスの剣技の熟練度を見切っていた。
「商人なのに凄いね。マスタークラスはあるよ。後ろは大丈夫そうだ」
スヴェンは安心するとハルバードをクルクルと回転させながら右、左と持ち替え、スケルトン達を打ち砕きながら進むスピードを上げる。
300メートルほどジリジリ進んだ頃、大きな建物の角を曲がると目の前に広大な海と、そこへ突き出したいくつもの桟橋が見えた。
その中に巨大な帆船が止めてあり、船に這い上がるスケルトンを船べりの船員達が迎撃しつつ海へと蹴落としながら戦っている。
船に三つ並んだ巨大なマストがあり、それぞれのマストに3段に並んだ帆は全て折りたたまれている。
船首には鳥の頭を模した彫像が取り付けてあった。
「多分あそこだ! 皆がんばれ。もうすぐそこだ」
「こんな状況で錨を降ろして帆を畳んだまま、接岸しっぱなしなんて相当根性の座った人達ね」
「船乗りだしね」
スヴェン達はわらわらと寄り付くスケルトンを倒しながら船へと近づいていく。
船の中央のマストの天辺近くの見張り台に居た船員が望遠鏡をこちらへ向けた。
そして大声で下に向かって何かを叫ぶ。
それを聞いた船員達が数人がかりで船から桟橋へ乗降用の板を渡した。
とたんに桟橋にいたスケルトン達が躍りかかり、シミターを持った船員達と戦闘になる。
「スヴェン君! なんかあの船の人達も必死みたいだよ」
「凄いわね。なんか船腹に大砲がいくつも並んでるわよ?」
「…………とにかくあそこへ駆け込むんだ!」
スヴェン達はついに船にまで到達し、乗降用の板を渡って船へと駆け込んだ。
2体のスケルトンをしがみ付かせたまま板が引き上げられる。
そして船の中に落っこちてきたスケルトン2体をスヴェンが一振りで片付けた。
アモイが周囲の船員にひきつった笑顔で大きな声であいさつをする。
「ど、どうもみなさん。私がラード王にレリックの探索を依頼をされたトレジャーハンターのアモイです」
目つきの悪いやせ形高身長の船員がスケルトンを甲板から海へ蹴落とし、係留ロープを切断しながらアモイを睨み付ける。
「ああん!?」
「ひ、ひぃ……」
操舵室のほうから筋肉質で巨漢で、顔が傷だらけのスキンヘッドの男が鉄製の10キロ以上はありそうなメイスを片手で担いで現れた。
そして能面のように固まった笑顔で話しかける。
「ようこそ、アモイ様、スヴェン様、そしてレリック探索隊ご一行様。私は航海士のダミアンです。よろしくお願い……」
船の縁からスケルトンが這い上がり、ダミアンの背後からシミターを振り上げて襲い掛かる。
ダミアンは背中を向けたままメイスを片手で振り、スケルトンを粉々に打ち砕きながら海へとふっ飛ばした。
「よろしくお願いしますよ」
「ど、どうも……よろしく……。あ、あの船長にも挨拶をしたいかな……なんちゃって……」
「てめぇら! 出港するぞグズグズすんな!」
操舵室から真っ赤な三角帽子を被った女性が現れて船員達に叫ぶ。
立派な身なりの服装をしており、腰には装飾のされたシミターを付けていた。
ダミアンが凍った笑顔で紹介する。
「彼女がこの船の船長、ベラ様です。ベラ様! この方達がレリック探索隊で、この方がアモイ様だそうです!」
「あー、そう。よろしく。ベラだ。……こらぁっ! そこのお前! キビキビ動けやぁっ!」
「ひぃ……、よ、よろしくお願いします。アモイです。
ベラ船長があまりにお綺麗なので、緊張しますなぁ。あははははは」
「…………あ?」
「すいませんでしたぁ!」
アモイは近くに居た船員に小声でささやく。
「どうもー。き、君たちの船長おっかないね……ははははは」
「あぁ、元海賊船長だからな。改心したけどな。建前上はな」
「か、海賊? デスクレセント島を拠点に荒らしまわってた赤猫旅団の勢力の……」
「ちげぇよ。ベラ様はどこの勢力にも所属してねーよ。お陰でサンドラ・キャットと海戦したりさせられたがな。ケケケケケ。い、いででで」
ダミアンが船員の耳を掴んで引きずって引っ込める。
「黙ってろ屑が。余計なことを言うなと言っておいただろうがっ!」
アモイがスヴェンの元にすり寄って小声で嘆く。
「スヴェン君……こえぇよ。あいつらみんな怖えよ。堅気じゃないよぉぉ」
「……うん。海賊船だなぁとは思ってたし、海賊だなぁとは思ってた。元赤猫旅団かな?」
「違うと言ってたよ」
二人でこそこそ話す下からリンがにゅっと現れて言った。
「赤猫旅団全盛期にフリーで海賊やってるなんて、相当気合い入ってるわよここの船長も船員も。
私が見た中でも激ヤバな人達みたい」




