第十三話「アモイと共に王都へ」
目の前で右肩から左脇にかけて両断され、崩れ落ちるグリーンハンズを見ながら、スヴェンはハルバードをクルクルと回して石突を地面に落とす。
そして口笛を吹いた。
向かいの石造りの旅館の屋上から様子を見ていたセキトバ号はそれを聞き、背を向けて姿を消した。
そして一階の旅館の入り口から駆け出してスヴェンの元に走り寄る。
「よくやったセキトバ号、よーしいい子だ」
スヴェンは食料生成の魔法を詠唱してリンゴを出すとセキトバ号に与える。
アンデッド達の呻き声が止み、辺りは静かな波の音が響くのみ。
「いけー、突撃だぁーー!」
剣を構えて石橋をかけ渡ってきた数人の兵士がスヴェンの姿を見つけ、その前に倒れるグリーンハンズの動かぬ屍を見る。
そして剣を鞘に納めてスヴェンの元へと駆け寄った。
「やはりっ、これはグリーンハンズ! あなたがやったのか?」
「ええ、恐ろしい相手でしたが罠に上手くはまってくれました。
そしてグリーンハンズを倒すと同時に周囲のアンデッドが一斉に壊滅して崩れ去ったんです」
「さらっと言うが……凄まじい戦果だぞ。あちらの島でもほとんどのアンデッドが崩れ去り、生き残っていた少数は兵士たちが今頃壊滅させているだろう。
タートルフォート海砦は守られたのだ。
それにしてもあなたは一体何者だ?」」
「スヴェンと言います。悪党を狩って回る賞金稼ぎってところですかね」
「スヴェン……、スヴェン?! あの赤猫旅団のメリッサを打ち倒した元ARCCの魔法の夜!」
「ははは……」
「そなたの武勇は海軍にも知れ渡っている! お会いできて光栄だ」
「おーーい! スヴェン君無事かぁーー?」
石橋を渡ってコナーとクリフが二足歩行する恐竜に乗って駆けてくる。
そして二人ともスヴェンの隣で恐竜を止めた。
「良かった無事だったか。向こうの島のアンデッドのほとんどがいきなり崩れ落ちて壊滅したんだよ」
「グリーンハンズが死んだからね」
「うぉっ、これがグリーンハンズ……、こいつ自身もアンデッドなのか」
スヴェンは思い出したように兵士に向き直って尋ねた。
「そうだ、シャドウ・キングの軍隊が島を次々と攻め落としたと聞いたんですが、アルターアンク島がどうなったかご存知ですか?」
「アルターアンク島? ああ、あの大陸の隣の離れ小島、金持ちの別荘が立ち並ぶ避暑地か。私の知る限りそこが襲われたという話は聞いていない」
「スヴェン君、その島がどうかしたのか?」
「知り合いの家があるんです。僕は様子を見に行こうと思います」
「そうか……私達はまだ無事な町の秘薬屋ギルドを渡り歩いて状況把握に努めることにするよ。
スタグランドの人々がどこにいるかも調べてみるつもりだ」
「我々も再びこの海砦の防護を固めなおさなければならない。海軍魔法兵をもっと駐在させるように掛け合ってみよう」
スヴェンは馬に飛び乗ると皆に別れを告げて魔法のゲートの詠唱を行った。
異空間の門が開く。
「偉大なる魔法剣士、スヴェンどのに栄光あれ」
「気を付けてな、スヴェン君」
「皆も気を付けて」
スヴェンは異空間の門へと馬を進めた。
そしてスヴェンは異空間を通り抜け、アルターアンク島の大地へと降り立った。
目の前には静かに押し寄せる波と砂浜が広がり、島のあちこちに緑の木々が茂る。
そして背後を振り向くと、3階建て屋上付きの巨大な石造りのタワーがどっしりとそびえ立つ。
スヴェンはそのタワーの玄関のステップに立ち、扉に手を伸ばした。
だが扉は自分から開いた。
「ん? スヴェン君じゃないか!」
「アモイさん、無事だったんですね?」
扉から出てきたのはトレジャーハンターのアモイであった。
アモイは以前スヴェンがハルバードを手に入れた遺跡に何度か大勢の傭兵を連れて潜り込んでお宝を運び出し、もともと金持ちだったがさらに大金持ちになっていた。
そして今ははこの島に巨大なタワーを建てて、そこに住んでいるのである。
「無事? そりゃまぁピンピンしてるよ。
あえて言うなら最近太ったせいか、お気に入りの服のボタンが無事ではない」
スヴェンはアモイの服装を眺めた。
今から出かけようとしていたのか、よそ行きの服を着ているが服の腹の部分の布が伸びきって、ボタンの紐が伸びてしまっている。
スヴェンは再びアモイに向き直った。
「シャドウ・キングという奴がアンデッドの軍隊を率いて島々を次々と侵略してると聞いてたので心配してたんですよ」
「あぁ……その事か。オイラもシャドウ・キングの動きは注視しているよ。
もしここが危なくなったらいつでも逃げれるように準備を始めてるんだ。
おっと……それよりも急いで出かけなきゃいけないんだよ」
「どこへ行くんです?」
「カルフンガリアさ。
何故か知らないけど、王様、ラード公に呼ばれたんだ。
さすがに王様に謁見するんだから、事前にカルフンガリアの町の裁縫屋に寄って直してもらわなくちゃ」
「一体何の用事だろう?」
「思い当たる事は……カルフンガリア博物館に寄付した古代の遺品に関係することかな?
そうだ、スヴェンも一緒に行ってみるかい?
君の分の展示も盛況だそうだよ?」
「カルフンガリアか……たしかイヴァリスやリンは今その辺で活動してるんだったな……僕も行ってみます」
「ようし、じゃぁ準備はいいかい?」
アモイは呪文の詠唱を行い、魔法の門を開けた。
スヴェンはアモイの後に続いて再び異次元の門をくぐる。




