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第五話「魔法学校評議会の異変」

 正午を過ぎた頃、スタグランドの海岸でスヴェンはアンソニー老人とともにバーベキューのパーティーを行っていた。

 シーサーペントの肉を使ったステーキや串焼き肉はいくらでも有り、周囲に集まる人々に振る舞う。

 珍しい物見たさに集まる人々は増える一方であった。

 まるでこの島の住民のほとんどが押し寄せたような状況である。

 簡易で用意された机で、スヴェンの隣にローラが座っている。


「シーサーペントってやっぱり魚じゃなく、肉なんだね。

 やはりバーベキューに欠かせないのはソース。

 ローラの用意してくれたソースを付けて食べると最高に美味しいよ」

「ウフフフフ。同じ味ばかりだと飽きると思って甘口、辛口、ニンニク抑えめの野菜ベース、異国の調味料の味噌ベースの4種類用意したわ」


「ローラさん、それにしてもますます料理の腕を上げてるね。

 食材の見極め、調理のスピード、プロの一流のシェフと比べても遜色ないよ」

「ギルドメンバーの食事をずっと作ってるからね」


「そういやもうギルドメンバーは50人を超えたんだったね。

 料理だけじゃなく、アリスさんに変わってギルドマスター補佐もやってるんだよね。大変だね」

「ええ、でもとても楽しいわ。私もともと人の面倒を見るのが好きなのよね」


「凄いなぁ。ウエゾ老師の苦行に耐えた僕でも出来ないことだよ。

 ローラさんには頭が上がらないや。

 ところでこの砂浜に上陸した時から気になってたんだけど、あそことあそこに立ってる背の高い塔は何なの?

 あんなもの前は無かったよね?」


 スヴェンは砂浜の左右遠くに見える細長い塔を指差して言った。

 それはスタグランドを覆う森の木の2倍ほどの高さで遠くからもよく見える。


「レディ・エンゼルさんが取りまとめる魔法学校評議会が作ったのよ。

 スタグランドの海岸全域から見えるようにあちこちに建っているわ。

 魔法の実験施設だと言ってたけど、正直あれが何なのか正確に知っている人は居ないわ。

 私はあちこちにあれが生えてる風景はあまり好きじゃないのよね」

「そうかぁ。

 レディ・エンゼルもARCCが解散して以降、遠くに離れていっちゃったような気がするんだよなぁ。

 元から冷たく見える人だったけど、この前街で会った時もまるで他人のような顔してたしなぁ」


 スヴェンが次の串焼き肉を口に頬張った時、人々が海の方を指差してざわめき始めた。


「なんだあれ?」

「結界? 魔法の結界みたいに見えるぞ。でもこんな大規模なものは見たこと無いな」


 つられてスヴェンもそちらを見る。

 まるでスタグランドの島全域を覆うように淡赤色の結界が広がっていた。

 ローラも、机の向かい側に居たナーバもそれを見て驚いている。


「何だあれ? 魔法の実験でもしてるの? こんな事よくあるの?」

「いや、初めて見る。海岸沿いの塔から魔法が放射されているように見えるのう。ちょっと魔法学校に行ってレディ・エンゼルに聞いてこよう」


 ナーバが魔法のゲートを開く魔法を詠唱した。

 しかし魔法は発動しない。


「おかしいのう。失敗はしていないと思うんだが」


 スヴェンは指先にマジックトーチを一瞬灯し、消してから言った。


「魔法を無効化しているわけではなく、移動魔法を制限しているらしい。

 ……嫌な予感がする。

 ナーバ、ギルドメンバーを全員ここに集めていつでも集団で動けるようにしておいて欲しい。

 魔法で戦える者は万全の準備を。僕がレディー・エンゼルに会ってくる」

「気を付けてな」


 スヴェンはギルドメンバー用の宿舎へと走り、ほとんど物置状態になっている自分の部屋から聖ジャーギィのハルバードを手に取った。

 そして厩舎のセキトバ号を連れ出すと背に飛び乗って魔法学校の方へと走る。


(こんな大規模な魔法は見たことがない。

 だが移動を制限する魔法。

 明らかに殺意と拭い切れない不安を感じる。

 決して見逃してはいけない何かがある!)


 スヴェンは魔法の意図や意味を知らない。

 だが果てしなく積み重ねた殺意の応酬の経験から、見えない敵の罠を嗅ぎとっていた。

 マジシャンズ・ヴィレッジの門を潜ってスヴェンは周囲を見回す。

 何人もの人が街には居た。

 ただし全員が頭を抱えて呻きながら地面をのたうちまわっていた。


「ううぅぅうぅ……。だ、誰かぁーー!」

「うううぅぅぅ」


(どうした? 何が起こった?)


 ふと見上げると顔が隠れるほどフードを深く被った人間が3人、馬に乗って建物の陰から現れた。

 そしてスヴェンの方向を指差して馬を走らせる。


(何だ? あのローブについている紋章は魔法学校評議会の関係者)


 3人のローブの男はスヴェンを取り囲む位置にまで馬を走らせると一斉に呪文の詠唱を始め、スヴェンに手をかざした。

 最初は3人が自分に何かを伝えようとしてたのかと思い、立ち止まっていたスヴェンだが、とっさに透明化の指輪をはめて姿を消しその場から少し移動する。

 3人の囲む中央の空間、スヴェンの頭ほどの高さの位置で緑の球雷が発生し、しばらく火花を放っていたが消滅した。


「逃したか」

「街の人間が予想外に少ない。一体皆何処へ行ったのだ?

 一斉に片付けるつもりだったのに計画が少し狂ったぞ」

「この島の何処かには居るだろう。

 今朝には何時もどうりに人々が居たし、船の出港も全て管理している。

 移動魔法でも逃れることは出来ないのだ。

 島中に我らの狂信者、コンシル・ジーロットを走らせて探しだすのだ」

「フォールン・エンゼル様を失望させるわけにはいかぬ。

 急いで狂信者を増やし、探索の手を広げるぞ」


 3人は馬を走らせてその場から消えた。


(どうやら一刻を争う状況のようだ。レディ・エンゼルの件は後回しだ。

 皆を逃さなければ!

 ……しかし……フォールン・エンゼル?

 ……まさかな……冷酷な人だが強い正義と信念の女性だ。

 関係は無い……はずだ……)


 スヴェンは反転してギルドメンバー達のところへ向かった。

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