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第四話「ウフフフフ。ハーレムで学ぶ魔法初歩」

 アリスに連れられてスヴェンは森の中の日当たりの良い広場に出た。


「みなさーん。彼が今日からギルド『スキッピング・ベア』に加入したスヴェンくんです。仲良くしてあげてね」


 広場には十数人の人間が集まっていた。

 立ち話をする冒険者、相変わらず剣の素振りをするシェイド。

 輪になって座って歓談する女の子たち。

 このギルドは半数以上が女性のようである。


「スヴェンくん。よろしくね」

「私はローラ。あら?酷くケガをしているんじゃないの?ちょっと見せてみなさい?」


 女の子たちがスヴェンを取り囲む。

 ローラと名乗った18歳くらいのお姉さんがスヴェンの手を掴み、服をまくり上げる。

 スヴェンは恥ずかしがって一瞬抵抗したが、ローラはそれを許さなかった。

 スヴェンの周囲を女の子たちが取り囲む。


「可哀想ー。こんなケガをして。一体どうしたの?」

「いや、ちょっと雄鹿に襲われて……。だ、大丈夫だから……」


 スヴェンが振り払って立ち去ろうとするとローラに後ろから両腕を首に回して、捕まえられた。

 柔らかい大きなものが背中に当たり、本格的に逃げ場が無くなった。

 側頭部の至近距離から声が掛かる。


「そ・れ・は……許しません!」


 スヴェンの前に同い年くらいのワンピースを着た女の子が歩み出た。

 その女の子が両手を広げて目を閉じ、魔法の詠唱を行った。

 3秒ほどしてスヴェンの体が輝く光と、焚き火に当たるときのような温もりにつつまれる。

 体の傷がみるみると塞がり、あちこちの痛みが消えてなくなった。

 驚いたスヴェンは自分の体を見回しながら尋ねる。


「スゴイですね。今のは魔法ですか?」

「ええ、グレーター・ヒーリングの魔法よ」

「彼女はエリィちゃん。そこに居る女の子たちの中では一番の魔法の使い手よ」


 スヴェンは興奮しながら言った。


「おおお……。こんな魔法が使えたら怖いものは何もないじゃないか。他にも何か使えるの?」


 エリィは更に両手を広げて魔法を詠唱する。

 突如スヴェンの顔の30センチほど斜め上の空間が黄色く発光した。

 そして小さな爆発のような衝撃波を出すと、空中からコッペパンが出現して落下する。

 スヴェンは慌ててそれを受け止めた。


「……凄い!これ食べられるの?木の葉に戻ったりしない?」

「ええ大丈夫よ。味は保障しないけどね」


 パンを一口かじったスヴェンは感涙した。


「……こんなの無敵じゃないか! チートだよチート! 夢のチート!

 いくらでも食料が湧いてくるなら生きるのに何も不自由しないよ!」

「そういう訳でも無いのよね……」


 エリィは手招きして近くに座るように促した。


 エリィの魔法講義が始まった。

 スヴェンの周りに他の女の子も取り囲むように座る。

 エリィはポケットから小さな袋を取り出すと、その中身を地面に広げる。


「魔法は無から有を生み出す訳じゃないのよ。

 不思議な力を発動させる代わりに、その代償を消費するの。

 それがこのマジックエッセンスよ」


 地面には5、6種類の試験管のようなものが並べられた。

 中には青い液体、黒い液体、透明な液体、黄色い粉などが種類ごとに詰められてコルクで蓋をしてあった。

 エリィの講義が続く。


「このマジックエッセンスは主にこの森で取れる野草などから抽出するのよ。

 この島、スタグランドに魔法学校があるのは、この島にはマジックエッセンスの材料が豊富に自生しているからよ。

 例えばこの青い液体、これはウィンドエーテルと呼んでいるわ。

 そこに生えている花の種から搾り取るの」


 エリィの指す場所にユリのような青い花が咲いていた。


「そしてこの黒いマジックエッセンスは、ブラックエーテルと呼ばれてるの。

 これはこれらのマジックエッセンスの中でも一番大切なものよ。

 魔法は使う内容によって消費するマジックエッセンスの種類も量も違うのだけど、ブラックエーテルはグレーター・ヒーリング、ポイズン・ヒールのような回復魔法だけじゃなく、高レベルの主力攻撃魔法でも使うの。

 このエッセンスを必要とする魔法に一番有用な物が多いから需要が高く、値段も高いのよ。

 これはあそこに見える黒いキノコから抽出するのよ」

「僕も魔法を使いたいです」

「じゃあ先ずは材料を集めることね。どれが必要か教えてあげるわ」


 エリィはスヴェンを連れて周囲を歩き、各種の必要な野草のサンプルを一種類ずつ説明しながら集めてスヴェンに渡した。


「これで全部。あとは自分で探してみてね。

 マジックエッセンスを抽出するまえの材料でも街で買い取ってもらえるわ。

 ここで生計を立てる手段の一つね」

「ありがとう。探してみるよ」


 後ろで見ていたローラが言った。


「もう鹿に剣をふるっちゃ駄目よ?彼らは大人しいから手を出さなければ襲ってこないわ。危険なことに関わっちゃ駄目よ?」


 スヴェンの所業は看破されていたようである。

 スヴェンは護身用としてシェイドにもらったバイキングソードを持つと、材料になる野草を集めて回った。


 スヴェンは1時間ほど夢中になって野草を集めていた。

 しゃがんで花を摘んでいると藪の向こうで女の子の声が聞こえた。


「痛っ! やめなさいよ貴方達! こっち来ないで!」


 藪をかき分けて覗くとフェアリーが2匹の小鳥に追われて突き回されていた。

 見覚えのある美少女、いやフェアリーである。


「いい加減にしなさいよ! あんた達、焼き鳥にするわよ?」


 スヴェンはそっとその場から離れた。


「ローラさんの忠告は守らなきゃな。うん」


 ボォォ!

 ピピィッ!


 背後で何か聞こえた気がするが、スヴェンは気にしないことにした。

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