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第四十六話「最後の決戦」

 メリッサ・キャットが率いる赤猫旅団は退路の選択を誤り、岸壁へと追い詰められていた。

 しかし赤猫旅団の全軍が集結したことにより、数だけはARCCの2倍に膨れ上がっていた。


「フォーカス!」


 赤猫旅団幹部の一人が全身に爆炎の集中を受けて倒れる。

 戦線は半崩壊し、戦士たちがぶつかり合っていた。

 シェイドがネコ・キャットを岸壁に追い詰めて斬りかかる。


「こんの糞ガキ! しつこいニャ! ストーカーかニャ?」


 ネコ・キャットはシェイドの斬撃を器用に手で払いながら魔法の詠唱を行う。

 だがスヴェンのスピットファイアが尽く妨害した。

 ネコ・キャットはポーションを取り出したが、スヴェンはスピットファイアで即座に破壊した。


「スヴェン!」

「ああ! 分かってる!」


 スヴェンは素早くラピッドスクラッチの魔法を詠唱すると、魔力を両手に込めたまま白銀のハルバードを持ち直し、シェイドの宝玉の剣と一緒にネコ・キャットに打ち下ろした。

 隣で戦いながら見ていた赤猫旅団幹部が素早く回復魔法を詠唱し、ネコ・キャットへと手を向けたが、それより早くスヴェンは魔力を開放した。

 エリィに教えてもらった最大攻撃魔法、至近距離のラピッドスクラッチがネコ・キャットを切り刻む。

 ネコ・キャットは絶命して崩れ落ちた。


「お前ら! 根性見せな!」


 メリッサ・キャットは浮遊の魔法を詠唱し、岸壁の上に飛び上がって魔法のゲートを開く。

 そしてその中に逃げ込んだ。

 ARCCのメンバーは全員1対多数の相手をしていて気付いてはいてもどうすることも出来ない。

 マサイアスがスヴェンの方を向いて声を響かせる。


「スヴェン! メリッサを追え! お前が倒すんだ!」


 赤猫旅団二人を相手していたスヴェンにシェイドが体当たりをして敵を奪う。

 1対4の状態である。


「スヴェン! 行け!」


 スヴェンは跳躍の魔法を詠唱、岸壁の上に飛び上がり、魔法のゲートに飛び込む。

 それと同時に魔法のゲートは消滅した。


 スヴェンがゲートを潜るとそこは湖の中の小島であった。

 一軒の小さな家が立ち、周囲は白い霧が常に覆っている。

 近くでは滝の音が聞こえた。

 シミターを持ったメリッサがスヴェンの方を向いて待ち構えている。


「おやおや、付いて来たのは坊やかい」

「メリッサ・キャット! お前の命運は尽きた。お前はもはやここまでだ!」


 メリッサは大爆笑した。


「何を勘違いしているのか知らないが、ここで死ぬのは坊やだよ。

 この島は魔法の霧で覆われている秘密の島さ。

 外からはどう頑張っても中に入ることは出来ない。

 つまり、助けは来ないってことさ。

 お分かり?」

「お前には無残に理不尽に殺されていった人々の苦しみが、悲しみが分からないのか?

 俺にはお前のやっていることがどうしても理解出来ない。

 無抵抗なか弱い人々を虐待して楽しいのか?

 お前のせいで……お前のせいでどれほどの人々が……」

「図に乗るなよ糞ガキ。

 アタイと赤猫旅団は好きな時に欲しいものを奪い、

 好きなときにお前ら雑魚を殺し、

 好きなときにいたぶって遊ぶ。

 特権階級なんだよ。

 お前らは毎日を赤猫旅団に怯えて暮らし、

 『今日は赤猫旅団に殺されませんように』と神に祈って朝起きて、

 『今日は赤猫旅団に殺されずにすみました』と神に感謝して眠る。

 そしてチンケな富を蓄えたお前らを赤猫旅団が狩るのさ。

 いわばハンター(狩る者)とハンテッド(狩られる者)の関係さ」


 高笑いをするメリッサを見てスヴェンはマジックウィザードハットを深く被り、心を落ち着けて集中を始めながらメリッサに最後の言葉を投げかけた。


「もう何も言う事は無い。だが最後に、お前の言葉の間違いを一つだけ訂正する。

 ハンテッド(狩られる者)はお前であり……」


 スヴェンは白銀のハルバードを斜めに構えて中腰になり、戦闘態勢を作った。


「この俺がハンター(狩る者)だ!」



 一方、カルフンガリアは重装オークの密度の上昇で迎撃がギリギリの状況であった。

 モンク達が叫ぶ。


「無理だっ! 多すぎる!

 何とかしないと抜かれるぞ!」

「もう戦える者は全員戦っているわ!

 HaPの職人たちも全員弓や斧で戦っているのよ!」

「もう爆発ポーションが底をつくわ! どうしましょう?」


 ジャーラのもとに荷車を引いたイヴァリスがやって来て商品と値札を置いた。


【爆発ポーション:在庫900 価格100ゴールド(大サービス)】

【猛毒爆発ポーション:在庫900 価格100ゴールド(大サービス)】

【爆炎ポーション:在庫900 価格100ゴールド(大サービス)】


 アメリアが白ける。


「結局金は取るのね」

「いいわ、全部私が買うわ。どんどん投げちゃって」


 イヴァリスの背後をマントを被った異国人が通り、イヴァリスと挨拶をかわした。

 異国人は通路がコの字型になってオークが列を作っている場所のバリケードの高台に登ると魔法を詠唱し始めた。

 長時間の詠唱の後に、猛烈な吹雪と氷の飛礫が魔法使いの周囲に渦巻き、オーク達を次々と凍結させて粉々に砕き始めた。

 城門近くの矢倉に居たビクトルが叫ぶ。


「畜生! やっぱり出やがった!

 ミュータントオークが来るぞ!

 5体は居る!」


 5体のミュータントオークは次々とカルフンガリアの門を超えて入り込む。

 何人ものレンジャーが弓を掃射し、矢が突き立つがまったくダメージになっていない。


「どうすりゃいいんだ! 一体どうすりゃいいんだよ!」

「5体だって?

 1体だって倒せやしねーよ!

 こんな化物相手に何が出来るって言うんだ!」

「ジョンソン! ……ジョンソンいい加減にしろ!」

「ゲームオーバーだよ皆、もうゲームオーバーだ!

 俺達に何が出来るっていうんだぁ!」

「ジョンソン!

 ホワイトトリオムでは食料生成とマジックスクラッチ程度しか使えない少年魔法使いと粗末な装備の少年戦士が同じ怪物相手に街を守るために勇敢に戦ったんだぞ!

 彼らはARCCの一団と共に今この瞬間も命がけで、この街を、この世界の人々を守るために死闘を繰り広げているだろう!

 いいかっ! このカルフンガリアは俺達に託されたんだぞ!

 みっともない真似をするな!」


 そばでスタグランドの魔法使いの一団に混じってオークの行列に攻撃魔法を放っていたナーバは一瞬ビクトルの方を向いて横から会話を聞いていた。

 そしてしばらく前方の宙を見ていたが、オークの方に向き直ると、さっきまでよりも力を込めて勢いを増し、マナが尽きるまで一心不乱に魔法を放ち続ける。

 ビクトルが背後のマリアに叫ぶ。


「マリアさん、特別強力なバリスタを作れるか?」

「やってみるわ!

 貴方達! 今直ぐバリスタを作ってちょうだい!

 あの怪物たちが王城に到達する前に!」

「厳しいな! だがやってみるさ」

「ジャーラさん! あんた錬金術士だろ強烈な猛毒を作れるか?」

「ええ、いくつも樽で蓄えてるわ」

「毒矢だ! 毒矢を作るぞ!」


 イヴァリスは商品を追加した。


【猛毒ポーション:在庫900 価格100ゴールド(大サービス)】


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