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第四十一話「カルフンガリア王国軍壊滅と暗殺団急募のお知らせ」

 ここはカルフンガリア近くの山脈の裏側の谷である。

 森の中を騎兵団がオークを次々と打ち倒しながら前進していた。

 30人ほどのオーク兵達は満身創痍で退却を繰り返している。


「長々とカルフンガリアを苦しめたオーク共はもう直ぐ壊滅する。

 我に続け! 勝利は目前だ!」


 騎馬に乗ったフルプレートの騎士が血塗れのランスを掲げて配下の兵士たちを鼓舞する。

 この騎士はカルフンガリア騎士団のフォステル将軍である。


 スヴェン達は交易商人イヴァリスを救出後、赤猫旅団の本拠地で見た計画を全てARCCのマサイアスに報告した。

 次の日二人はカルフンガリアに呼ばれて大勢の宰相や将軍達の前でも説明を行ったのである。

 カルフンガリアは斥候を出し、スヴェン達の言うオークの最前線基地のある洞穴が事実であることを確認した。

 そして王国の主力騎士団を即座にそこへと向かわせたのだ。


 フォステル将軍は迎撃に出てきたオークの一団を森林地帯で蹂躙し、退却するオークを追って洞穴へと向かっていた。

 フォステル将軍と馬を並べる女参謀が言った。


「フォステル将軍!」

「何だ?」

「私、何か背筋にはしる寒気を感じます。

 何となくこのオーク軍は薄気味悪くて怖いです」

「今更何を腑抜けた事を言っているのだ。

 今まで何度も戦いに参加して血と内臓を見てきたであろう。

 臆病風に吹かれたか」

「……そうですね、勝利は目前、今日を持って平和を掴みとりましょう」


 この参謀はフォステル将軍よりもカンが鋭かった。

 彼女の感じたものは、戦略家の放つ殺意であり、軍の全滅を敵が確信している時の気配なのである。

 フォステル騎兵団の眼前に山脈の岸壁に開いた洞穴が近づく。

 満身創痍のオーク達はその中へと我先にと駆け込んで逃げた。


「突入せよ! 今こそカルフンガリアを脅かすオーク壊滅の時だ!」


 フォステル将軍を先頭に騎兵団は洞穴へと突入した。

 洞穴は入り口こそ小さいものの、中は広大に堀広げてあり、整列した軍隊が並ぶことが出来るほどの広さである。

 フォステル騎兵団が全員中に入り終わった頃、洞穴の最前線では騎兵たちが立ち止まっていた。

 一段と高くなった床に槍と盾を持った重装オークが立ち並び楽には超えられそうにない。

 不意に洞穴左右の天井付近の壁に次々と穴が空く。

 いや、穴が空いたのではなく、岩で作られた扉が開いたのである。

 そこには黒い弓を持ったオーク弓隊が並んでいた。


「狼狽えるな! オークの粗末な兵器は我らの鎧を通らぬ」

「どはぁっ!」


 入り口で叫び声を上げながら最後尾の騎兵が馬ごと飛ばされて壁に叩きつけられた。

 地鳴りとともに体高6メートルほどのミュータントオークが3匹、かがんで暖簾を潜るように次々と洞穴に入り込む。


「者共! あの化物を包囲して倒すのだ!」


 騎兵たちはミュータントオーク3匹に押し寄せて攻撃を始める。

 ミュータントオークは手傷を追いながらも大木のような棍棒で鎧ごと騎兵を叩き潰しながらゆっくり隊列を組んで前進した。

 その背後には魔法使いオークが7匹ほど続いており、手傷を負ったミュータントオークは即座に魔法で回復され、ダメージになっていない。

 遂に左右の壁の上の沢山の穴から矢が降り注ぎ始める。


「ぐわぁ!」

「畜生こいつっ!」

「どひぃ!」


 フォステル将軍は眼の前の光景が信じられなかった。

 彼の誇る数百人もの騎兵団が溶けるように壊滅していく。

 これが彼の見る人生最後の光景なのである。

 洞穴の高台に並ぶ重装オークの列の背後から大太刀を振り上げたサムロがジャンプして飛び出し、フォステル将軍の体を鎧ごと二つに割いた。


 次の日、カルフンガリアでは王城にラード国王と宰相達が集まり悲壮な顔で会議を開いていた。


「フォステル騎兵団は洞穴に入ったまま誰一人出てこず、壊滅したものと思われます。

 スバケット騎兵団は森の中であっという間にスバケット将軍の首がサムロによって切り落とされ、混乱して退却中にオーク騎兵団とあちこちに潜伏したオーク弓兵に攻撃され、この報告を残した兵士を除いて壊滅です。

 ファイエット騎兵団は重装オークとの戦闘中にカタパルトの攻撃を受けて8割死亡して退却しました。」


 苦い顔で沈黙していたラード国王が口を開く。


「大丈夫だ。予が直々に徴用したシュタイナー将軍も向かっておる。

 彼ならばやってくれる」


 一瞬の沈黙の後、一人の宰相が言い辛そうに口を開いた。


「ラード国王閣下、シュタイナー将軍は……」

「シュタイナー将軍は、軍資金を持って姿をくらましました。

 国王陛下が徴用した次の日の話です……」

「な、なんということだ……あのシュタイナーが……」


 国王は衝撃を受けて額に手を当てて後ろへよろけるように椅子にもたれた。


「……うーむ……」

「主力軍を全て失ったぞ、我々は窮地に陥った。

 5日後の赤猫旅団の襲撃に抵抗する手段すら失ってしまった」

「なぜオークごときに……」

「サムロだ、あいつは剣技だけでなく知略も化物級だ。

 よりによって赤猫旅団の蔓延るこの時代に、神はなぜあのような化物を敵として遣わしたのか……」

「5日後についてはカーグレイルを始め、ラード王国帰属の国々から援軍を募ることにする。

 だがもう攻める手は無い。

 ……私には……怖くて攻める手はうてんよ」

「そんな事でこの街を守れるかっ!」


 ラード国王が口を開いた。


「これ以上の兵を失うことは出来ぬ。

 残りは全て防衛に回し、街の全ての男に戦いの訓練をさせよ。

 そしてサムロと正面から戦うのが無理ならば暗殺を試みよ」

「おぉお、さすがは国王陛下殿。

 ひょっとして我らの知らない国王直属の暗殺団などをお持ちだったのでしょうか?」

「予は本来そういう醜い争いは嫌いなのだ。

 母上も身内の王子の放った暗殺者に殺されてしまったしな。

 そんなものは持っておらん」

「生半可な暗殺者ではサムロのいる場所に到達すら出来ないぞ。

 どうする?」

「国中から潜入の得意なものを募ろう。

 もちろん目的は伏せねばならない。

 だがサムロの元へ辿り着きさえすれば猛毒を使ってなんとか出来る」

「やれることは全てやるべきだな。今直ぐ手続きにはいろう」



 ウシャドナの街の銀行前で、シェイドが袋にコインを入れて一回だけ放り投げて音をならした。

 しばらくの沈黙の後、スヴェンが言った。


「350ゴールド」


 リンが言った。


「1573ゴールドね」


 イヴァリスが紙に数字を書いて掲げる


【1575ゴールド】


 シェイドが中身を地面に並べた。

 合計1575ゴールドであった。

 リンはがっくりと肩を落とし、イヴァリスは無言でガッツポーズを取った。


「リンもイヴァリスも凄いなぁ。なんか別次元で勝負してるよ。

 ほんとこれ超能力の域だぞ」

「あの酒場で海賊全員の所持金の合計把握してたんだもの。

 凄まじすぎるぜ」


 コインの数当て遊びをしている4人の隣を役人が歩いて通り過ぎ、近くの掲示板に紙を貼った。

 スヴェン達は掲示板に集まって覗く。

 町の人々もより集まってきた


【急募:隠密行動の得意な者、国の重要な公務に着いて頂きます。

 詳細な目的は国家機密のため開示は出来ませんが、

 採用者には30万ゴールド、

 貢献者には100万ゴールド、

 目的達成出来た者には1000万ゴールドを支払います】


「リン、得意だよなこういうの」

「行ってみるわ。 あまりにも額が大きくてあやしいけど、ラード国王の正式な印章も付いているみたいだし」

「気を付けてねリン」

「大丈夫、何かあれば逃げてくるわよ」

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