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第三話「生まれて初めての死の恐怖」

 スヴェンはギルドメンバーとともに森の中にへと入っていった。


「お前、魔法剣士になりたいんだって?

 じゃあ剣術もやらないといけないな。俺のお古を貸してやるよ」


 スヴェンはギルドメンバーの一人シェイドという新米剣士から古びたバイキングソードを受け取った。


「ありがとう。剣って重いんだね」

「ああ、まずは素振りだ。こうっ! こうっ!」


 シェイドがスヴェンの前で素振りをしながら歩く。

 スヴェンもそれにならって素振りをしながら歩く。

 素振りのせいか、ギルドメンバー達より歩みが遅れていき、時折走って追い付くのを繰り返した。

 ふと、スヴェンが横を見るとメスの鹿がうなだれるように草を食べている。

 スヴェンはまだ重くて扱いきれないバイキングソードを斜め後ろに振りかぶって鹿に向かって駈け出した。

 この森の鹿は人に慣れているのか、スヴェンを見ても逃げない。


「うふふふふ、狩ってやるぞぉ!」


 スヴェンはニヤニヤ笑いながらソードを振り下ろした。


「えいっ!」


 鹿は間一髪飛び退いたが、前足にかすり傷が出来て血が流れている。

 突如隣の藪から大きな角を生やしたオスの鹿が顔を出した。


「げ、やば」


 オスの鹿は角でスヴェンを突き転がす。

 スヴェンは這いつくばるように逃げようとするが、さらにお尻を角で付かれた。


「イテテ! ごめん、悪かった。勘弁してくれ」


 オスの鹿は容赦しない。さらに身構えるスヴェンを突き転がす。

 スヴェンはこの時初めて自分が殺されるかもしれないという現実を理解した。

 もう顔に笑みは無い。

 オスの鹿がさらに首をもたげてスヴェンの目の前に立つ。

 スヴェンは生まれて初めてとてつもない恐怖を感じた。

 鹿の顔には喧嘩か事故か、何で付いたか分からないが斜めに大きな傷があった。

 そして目の前に力を込められて、迷いなくこちらに向けられた、巨大に広がる二本の角。


 自分は今からこれで殺されるのだ。

 甘く見ていた。

 鹿がこんなに恐ろしいとは想像すらしていなかった。

 生きたい。まだ生きたいよぉ。

 スヴェンは腰が抜けた状態で、オスの鹿に片手のひらを向けて、片手で頭を守り、泣きながら命乞いを始めた。


「悪かった。メスの鹿をいたずらに傷つけて悪かったよ。頼む見逃してくれぇ!!」


 鹿に命乞いは意味が無い。再度、角がスヴェンに向けられた時、スヴェンの体がその場から消えた。

 鹿は不思議そうに周囲を見渡すと、立ち去っていった。


「スヴェンくん、皆からはぐれちゃ駄目でしょ。それにここのオスの鹿は強いから甘く見ては駄目よ?

 貴方死ぬ所だったのよ?」


 アリスである。

 とっさにスヴェンに透明化の魔法をかけたのだ。


「ありがとう。気をつけるよ」


 スヴェンは半泣きでアリスに連れられていった。

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