第三十三話「サンドラ・キャットの急襲」
「アモイさん! アモイさん!」
キャンプでスヴェン達とテーブルを囲み座っていたアモイの元に一人の人夫が興奮しながら駆け寄る。
「遂に出たよ! あんたの言うとおりだった。石造りの螺旋回廊が出てきた」
「遂に出たか!」
「行ってみよう!」
半径5メートル、高さ5メートルほどの巨大な穴の底には石造りの階段が露出していた。
螺旋階段にあった元の空間は1メートルほど掘り起こされ、2名の人夫がツルハシで慎重に粘土質の土を削っている。
他の人夫がスコップとバケツで土を移動していた。
「凄い! こんな地下深くにあったら誰も気が付かないよ」
「まぁ、確信はあったよ。オイラの経験とカンさ」
「僕達も手伝おう!」
アモイ探検隊は総出で発掘を行った。
螺旋階段はさらに地下へ5メートルほど続き、石の扉に突き当たる。
人夫がツルハシで石の扉をこじ開けると石造りの廊下がある空間が広がった。
アモイがペットの3匹のカナリアの入った籠を片手に、片手に松明をもって先頭をすすむ。
「なぜペットを連れて行くんだ?」
「こういう地下遺跡では目に見えない毒ガスが溜まっていたりするからね。それを探知してくれるのさ。
でも想像してたより空気が新鮮だね。
ここは1300年より遥かに古い遺跡のはずなのに換気の考慮がされている。
信じられない技術だよ」
アモイは周囲の壁と燭台、天井や地面を眺めると人夫に指示をして目につく燭台全てに松明を置かせた。
「思った通り空気の対流で換気出来る構造になっているみたいだ。
入ったばかりの時より新鮮になった気がするだろう?」
探索隊は地下霊廟をくまなく歩きまわり、アモイはその詳細な地図を作っていった。
霊廟は大きく3つの石棺安置エリアで形成されていた。
それぞれのエリアは幅5メートルほどの廊下状の空間が十文字になった作りをしており、その間をT字路のある廊下が繋ぐ。
石棺安置エリアは壁に3段の高さで窪みが掘られて沢山の石の棺が収められている。
棺を一つ開けて覗いてみたがミイラ化した遺体が入っているだけである。
何処にもお宝らしきものは無かった。
「さて……行き詰った訳だが本当に宝なんてあるのか?」
「歴史的な霊廟は確かに見つかったけど、聖ジャーギィがお宝をここに隠したなんてのはただの推測だもんね」
「皆聞いてくれ。ちょっと試してもらいたい事があるんだ」
「どうしたんだスヴェン? 探索中もなんか様子がおかしかったが?」
スヴェンは一行をエリアを繋ぐ廊下のT字路へ誘導する。
壁の彫像の口に手を入れて弄っていたが何かを見つけて確信を得た表情をしていた。
「リン、あの天井の穴の中を探ってみてくれないか? レバーが有ると思うんだ」
「分かったわ」
リンが空中を飛んで天井の穴に腕を突っ込んだ。
「……あったわ! どうするのこれを引けばいいの?」
「引いてくれ」
「スヴェン、何も起こらないぞ?」
「シェイド、そこの壁の下に隙間が無いか見てくれ」
「……あったぞ。指が入るくらいの隙間がある」
「皆でその壁を持ち上げてくれ」
人夫が集まり壁の隙間に並んで指を入れるとゴリゴリと持ち上がった。
奥へと続く廊下が姿を現す。
アモイが興奮して声を上げる。
「凄いじゃないかスヴェン君。2箇所のレバーでロックされていたのか。
一応ここはオイラも調べたんだけど、動かなかったんだ。
そんなカラクリよく気が付いたね。
どうして分かったの?」
「説明は後でするよ。壁が降りないようになにかつっかえ棒をしてくれ。
それまで僕もリンも動けないよ」
人夫たちが丸太いくつか持って来て壁を支え、一行は更に奥を探索した。
一本道の廊下からいくつも左右に枝分かれした道があり、それぞれが小部屋へと通じている。
それぞれの部屋には鍵の掛けられた宝箱、無造作に積み重ねられた石の棺、そして数々の金銀の彫像や宝玉で出来た壺などお宝が詰め込まれていた。
「凄い! 凄いよ! アモイさんあんたは凄い」
「宝箱も開けてみようか。
こういうものにはトラップが掛けられている事が多いんだ。
皆ちょっと離れてくれ」
アモイは宝箱から3メートルほど離れると呪文を詠唱した。
しかし何も起こらない。
なんどか繰り返すが一度も成功しなかった。
見ていたスヴェンが言った。
「それは解錠の魔法とテレキネシスの魔法だね?
僕もやってみよう」
スヴェンも詠唱するが魔法は成功しない。
隣でマジックトーチの呪文を唱えていたリンが言った。
「気のせいかと思ってたんだけど、この霊廟に入ってから一切魔法が発動しないわ?」
「うーん、こんなのは初めてだなぁ。仕方ない」
アモイは宝箱に近づくとロックピックを取り出して鍵穴を弄り始めた。
だがしばらくして床に寝そべってバンザイをした。
「駄目だー。こんな高度な鍵は初めて見たよ」
「(カリカリカリ、カチャ)開いたわよ。さぁ魔法の夜、開けるのよ!」
「え、まじか、リンちゃん凄いね」
「……まぁ、想像はしてた」
「ぎゃぁあ」
突如、元来た方向、霊廟のT字路から叫び声が響いた。
「どうしたんだ? 行ってみよう」
スヴェン達一行は道を急いで戻り、隠し通路からT字路のホールへと出た。
通路の先、石棺安置エリア中央に血だらけの人夫が倒れて動かない。
一行は慌てて駆け寄った。
「おーっとそこまでだ動くなよ? へっへっへ」
「武器を捨てな」
「サンドラ・キャット様、トレジャーハンター達を捕えましたぜ?」
スヴェン達の周囲を武装した蛮族十数人が取り囲む。
人夫数人が捕えられて喉元に刃物を当てられている。
やむなくスヴェンとシェイドは武器を地面に置いた。
「おやおや? 見覚えのある顔だね」
全身に女性用ライトプレートと赤マントを付けた女が歩み寄る。
片手にはショートスピアを持ち、肩叩き棒代わりにしている。
「……スヴェン……」
「ああ……こいつは赤猫旅団の幹部の一人、サンドラ・キャットだ」
「赤猫旅団の賞金首にされてここまで長生きした奴は初めてだ。
でもその幸運は今日で終わりだ。
この世で最後の仕事をしてもらうよ!」
スヴェン達全員の後ろに蛮族が付き、首に曲刀を押し当てる。
「そいつと、そいつ。
……以外全員殺しな」
「何だって? 武器を捨てて抵抗してないだろう?」
「さ、サンドラ・キャットさん、トレジャーハンターはオイラだ!
ほかの人は関係ない、只の雇われ人なんだよ。
返してあげてくれ!」
「そうかい? じゃぁ、ついでにコイツも生かせておけ」
「やめろぉおお!」
人夫たちは全員喉を切り裂かれて血とうめき声を出しながら同時に倒れた。
「ごめんねぇ? 人質は少ないほうが扱いやすいからねぇ。ッハ!
おい、隠し通路を案内させろ」
スヴェン達は刃物を押し当てられたまま隠し通路に逆戻りした。
宝物庫が並ぶ場所に出て蛮族の手下が興奮する。
「すげぇ! お宝一杯だぜ!」
「うひょぉ!」
「この中は何が入ってるんだ?」
一人の蛮族がリンが解錠した宝箱に駆け寄って、開けた。
とたんに耳が潰れるかと思うほどの爆音が鳴り響き、箱を開けようとした男の首がスヴェン達の足元に飛んできて転がる。
「気を付けな! うかつに触るんじゃない!
……お宝が壊れちまうだろ!」




