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第三十一話「処刑人、聖ジャーギィの伝説」

 ウエゾ老師の家の前ではスヴェンとシェイド、そしてトレジャーハンターのアモイが石垣に腰掛けて座っていた。

 家から飛び出たリンが3人に声をかける。


「お待たせ! 準備が出来たわ」

「遅いぞリン」

「それにしてもウエゾ老師はあっさりと許可してくれたね。なんか拍子抜けだったな」

「よし、全員揃ったね。ではまずセルバゼイの村に行くよ」

「何処なのそれ?」

「ホワイトウッドランドの奥地、ホワイト・トリオムよりもさらに森の奥の村さ。

 街道も通じてないし、世俗と隔絶された村だから知っている人すら少ないだろうね。

 じゃあいくよ?」


 アモイは魔法を詠唱して目を閉じて集中する。

 徐々に彼の前に魔法のゲートが出現した。


「さぁ行こう!」


 スヴェン達はアモイに続いてゲートを潜った。

 真っ白い発光空間を滑るように越えると小さな集落の真ん中に出た。

 何人かの子供達が目を丸くしてこちらを指差して驚いている。

 一人の子供が走って高床式倉庫へ駆け込み、大人を連れてスヴェン達の元へと戻ってきた。


「あー、えーと、アモンさんでしたっけ?」

「アモイです。お久しぶりです。イェルターさん」

「またお宝の調査に来たのかね? あんたも懲りないね」

「いえ、今日は発掘に来たのです。

 木を切って大穴を掘る重労働になると思うので、人を雇いたいんです。

 男手が必要なんですよ」

「もうすぐ冬だから狩猟している一部を除いて暇な人は多いよ。

 ま、これ次第だろうね」


 イェルターは手で銭を示すサインを見せた。


「もちろん払うよ。一人につき一日1000ゴールド出そう。

 10人ほど募集したい」

「ほぅ……、待ってな」


 イェルターはその場を去った。


「随分気前がいいな。あんた金持ちなのか?」

「この間のネックレスを売ったのさ」

「(すぅーーはぁーー)いいわぁ……この人お金の匂いがプンプンするわ」


 こうしてアモイ探検隊は編成された。

 護衛役のスヴェン、シェイド、リンと木こり穴掘り力仕事担当の人夫10名である。

 一団は列を作って森の中を進む。

 時折アモイは測量機を取り出し、メモを見ながら遠くの山や目立って高い木などを測って歩く方向を修正した。

 小さな枯れ木がアモイの方へと倒れる。


「危なーーい!」


 シェイドが素早くアモイの元へと駆け寄り盾をかざしてコツンと枯れ木を防いだ。


「大丈夫かぁーー! 大丈夫かああ!」

「だ、大丈夫だよ、大げさな……」


 しばらく歩くと巨大な蛇……の脱皮した皮が落ちていた。


「危ないわっ! アモイさんそこどいて、そいつ殺せない!」


 リンはアモイの視線を防ぐように目の前に飛んで来ると蛇の皮に魔法を放つ。

 蛇の皮は燃え上がって炭になった。


「大丈夫でした? ケガは無い?」

「あ、ああ……一体何だったんだ?」

「巨大なコブラが居たわ。私の魔法で消し炭になったけどね」


 一行は石を積み重ねた小さな祠のある場所にたどり着いた。

 古びて苔で覆われているが、表面は平坦に削られた石が使われており、かなり手の込んだ人工物であることが分かる。

 アモイはその祠に刻まれた模様を確認すると測量機を取り出して地図を見ながら山の位置を測っていた。


「よし、ここから西へ250歩ほどの位置だ」


 アモイは慎重に西へと250歩歩いて止まった。

 周囲は只の森林のように見えた。

 アモイは人夫に指示する。


「ここを中心に半径10メートルくらいにある木を全部切り倒して地面を露出させて欲しい」

「了解した。おい、お前ら仕事だぞ?」


 倒木に座ったアモイにスヴェンが尋ねる。

 リンとシェイドも周囲を取り囲んで座る。


「今回探しているお宝について教えてくれない?」

「ああ……1300年前の伝説、聖ジャーギィの物語は聞いたことあるかい?」

「さぁ、僕もシェイドも異国出身だからね。リンはある?」

「聞いたこと無いわ」


 アモイは石版の絵文字の写しの巻物を開いて見せ、指をさしながら語った。


「1300年前、この地を支配していた王国があったんだよ。

 今のラード公みたいな規模でね。

 そこの王様が病気になり、医者でもなおせず余命が僅かと宣告されたんだよ。

 王様は医者を全員処刑し、あろうことか得体の知れない呪術師に頼ってしまったんだ」


 アモイが巻物の上で指さす場所には老婆と周囲に多くの歩く骨の絵が有った。


「王様は呪術師の指示に従い、処刑されるべき罪人を集めては血を絞りとって飲み始めたんだよ。

 王様の顔色は悪くなる一方だが不思議な事に王様は元気を取り戻した。

 でも今度は大量の血無しでは生きられない体になってしまった。

 王様は法律を独断で捻じ曲げて、次々と国民を逮捕して死刑にしていったんだ。

 当時死刑を行う処刑人がジャーギィだったんだけど、彼の目にも明らかに罪人ではない人が次々と牢屋に詰め込まれていく。

 正義感の強かったジャーギィは遂に反乱を起こし、牢屋の人々を開放して彼らとともに国を脱出したんだよ。

 ジャーギィは僻地の隠れ里で逃げ延びた人々ともにしばらく生活していた。

 だが残された王国で遂に建前すらも放棄して王様が人間狩りを初めたのを聞くことになる。

 ジャーギィは精鋭の兵士と共に再び王国の首都へ向かう。

 すると王国周辺の森は全て枯れ果てた荒れ地に変わっていたんだ。

 そして首都に入るともはやそこは死臭しかしない場所だった。

 僅かに残された国民は全員家畜のように牢屋に入れられて、アンデッドの兵士や騎士団が迫害していたんだよ。

 ジャーギィは処刑人であると同時に凄腕の戦士でもあった。

 彼の家に代々伝わる輝く銀のハルバードを振り回し、連れてきた精鋭の兵士たちとともにアンデッドと化した王国兵達を次々と葬り、遂には狂気の王を打ち倒したんだ」


 アモイが示す絵では、聖ジャーギィが王様にハルバードを打ち下ろし、稲妻が走る姿が描かれていた。

 よろけた王様の手から先の部分は欠けており、そこで巻物は終わっていた。


「その後、国民たちは開放されあちこちへと逃げ延びていた人々も首都に戻ってきた。

 だけど王様が蓄えていた品々、宝物の数々は綺麗さっぱり消えていたんだ。

 アンデッド達の死体と共にね。

 聖ジャーギィが忌まわしき力を秘めた死体と品々を全て封印したと言われている。

 王国の富が全部消えたのさ」

「それを封印した場所を見つけたのね?」

「多分オイラ達の座っているこの下さ」

「なんか寒けがしてきたよ。ははは」

「おーい! 全部木を切り終わったぞーー!」

「ご苦労様! 今日はここでキャンプをしよう。明日から発掘作業だよ!」

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