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第十話「ダンジョンでお宝ウハウハ」

「ねぇー陸地はまだなの? もう船は飽きちゃったわ。

 ……デーモン召喚していい?」

「やめてくれ。僕にけしかけるつもりだろ。

 アンソニーさんは3、4日で着くと言ってたから今日にでも陸地が見えてくるはずなんだ。」

「陸地ねぇ……」


 リンはダルそうに立ち上がるとマストのてっぺんまで飛んで上がった。

 しばらく周囲を見回していたリンが叫ぶ。


「魔法の夜! 陸地よ! あっちに陸地があるわ!」


 しばらく後、見渡す限りの緑の陸地がスヴェンの目の前に広がった。

 スヴェンは安堵した。

 当たり前に生きていた陸地、緑の陸地がこれほど恋しいものだとは……。

 はやる気持ちを抑えきれず、櫂を漕いで全力で加速する。

 砂浜に船を漕ぎ着けてから陸に立つ。

 何処までも続く砂浜を隔てて片側は見渡すかぎりの海、片側は見渡すかぎりのジャングルである。

 人の気配も文明の気配も一切無い。


「砂浜を歩いて行ったほうがいいんだろうか……?」

「森のど真ん中に向かって突き進むのよ」

「何故? 迷うかもしれないじゃないか」

「この大陸は中央に一本の街道が有るのよ。

 その街道は大陸の端から端まで続いているわ。そこが一番の近道よ。」

「よく知ってるなぁ。どこで習ったの?」

「以前旅の商人から盗んだ荷物に地図が有ったのよ。

 そこに書いてあったわ」

「……。そうか……」


 スヴェンとリンは森の中をまっすぐと進んだ。

 幸いにも危険な猛獣に出会う事無く半日ほど歩いた頃、リンがスヴェンの肩に飛んできて立つ。

 そしてスヴェンの耳たぶを掴んで左側を指差した。


「魔法の夜! あそこに建物が有るわ! 中をちょっと見てみましょうよ。お宝が有るかもしれないわ」


 森の中に蔦に覆われた巨大な墓のようなものが木の影から見えた。

 スヴェンはお宝など信じていなかったが興味を惹かれてその建物へと向かった。

 墓石のような塔は高さ5メートルほど、一辺3メートルほどの四角錐の形をしている。

 中央に穴が空いて地下へと降りる階段があった。

 スヴェンは呪文を詠唱すると低級魔法、マジックトーチを唱える。

 スヴェンの左手が黄色い光で発光する。

 エリィに教えてもらった魔法、エリィのお陰で今の自分が居るのだ。

 階段を降りると中は広い十字路のようになっており、四方に石造りの廊下が伸びている。

 その内一方に別な明かりが見えた。

 松明を持ってフルプレートを付けた冒険者のようである。


「あ、あの……」


 スヴェンが話しかけようとするとフルプレートの男は背を向けて去っていった。

 人に出会うのは久しぶりで、人恋しかったスヴェンはその男の後を追って注意深く歩いた。

 曲がり角を2つほど曲がった時、何かの音が聞こえた。


 ガンッ! ガンッ! シャー!


 目を凝らすと先ほどの冒険者が多数の大蛇や毒蜘蛛、巨大なネズミに襲われている。

 冒険者はスヴェンを見ると無言でこちらへ逃げようとして歩こうとするが、周囲にまとわり付くモンスターに邪魔されて歩くのに苦労しているようだ。


「大変だ! 彼を助けなきゃ!」

「…………」


 リンは冒険者を見てしばし黙っていたが、にっこり笑ってスヴェンに言った。


「モンスターと戦うならその荷物が邪魔でしょ。今だけ持っていてあげるわ」

「珍しく気が利くじゃないか、頼むよ。じゃあ行ってくる!」


 スヴェンは冒険者の周囲にまとわり付く大蛇や大ネズミにバイキングソードを何度も打ち下ろした。

 一匹一匹手こずりながらも排除していく。

 冒険者は幸いにもフルプレートのおかげで蛇やネズミの牙が通らないようである。

 5、6匹排除するとフルプレートの冒険者は自由に動けるようになり、駆け足でその場から離れた。


 しばらく後、スヴェンがモンスターの残党を始末していると再びさっきの冒険者が多数のモンスターに囲まれてスヴェンの元へゆらゆらと歩いてくる。


「ばか! 気をつけて進めよ! それにそんな上等な鎧を付けて居ながらこんなモンスターを倒せないなんて情けないぞ?」


 冒険者はスヴェンにモンスターを擦り付けると自由にになり再び去っていく。


「礼も無しかよ! 自分で倒せないならこんな場所に一人で来るなよ!」


 スヴェンに小さなダメージが蓄積していき、ついに蛇の牙が足に刺さる。


「いてっ! いってぇ!!」


 足が腫れている。毒が回り始めたようである。


「き、キュアポイズンを唱えなければ……ゴフッ」


【スヴェンは魔法詠唱に失敗した】

【スヴェンの体に毒が回る】

【スヴェンは魔法詠唱に失敗した】

【スヴェンの体に毒が回る】


 やばいやばい。逃げなければ……囲まれていて逃げられない!

 再び冒険者が多数のモンスターを引き連れてえっちらおっちらスヴェンの元へとやって来た。

 冒険者は相変わらず無言である。

 お人好しのスヴェンは今頃になって気が付いた。

 この人は俺を殺そうとしている。


「ぐぅぅ……」


 スヴェンは全身に毒が回り、自由に動けなくなってその場に倒れた。

 もうダメだ死ぬと思ったが、何故か意識は保ち続けていた。

 フルプレートの冒険者はスヴェンの横にしゃがみ込むと、スヴェンのバックパックを開けて中身を漁る。

 スヴェンの財布が抜き取られ、冒険者はモンスターの残党に小突かれながらゆらゆらと去っていった。

 冒険者とモンスターたちが去った頃、床にぶっ倒れて一人残されたスヴェンの顔をリンが覗きこむ。


「気高い勇者様。人助けは終わったかしら?」


 リンの片手にはアンソニー老人に貰ったワンドが握られて、断続的に発光していた。

 徐々に回復したスヴェンは何度か失敗しながらも自力で解毒魔法と回復魔法を詠唱する。


「お前……最初から分かってたのか……」

「……ぷ! 良かったじゃない魔法の夜。ハーレム状態だったじゃないの。

 ……アーハッハ!」


 スヴェンはダンジョンの中で財布とその中身全てを失った。

 その代わりに別なお宝を手に入れた……と信じなければやっていけない。

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