シナリオ考察⑩ 税金
国の運営にはお金がかかります。
その運営資金は国民の血税によって賄われるのですが、その徴収とはどうやっているのか。それについて考えたいと思います。
税金は収入に応じ引かれる所得税、経済活動をする度に引かれる消費税、土地や家など財産にかかる固定資産税。大まかにこの3パターンがメインになります。細かいことを言いだせばきりがないので、この3つについてのみ説明します。
所得税は、働いて得た収入の何割かを国に納めるというものです。
日本であれば累進課税という「収入の大きい者ほど多く払う」システムを採用していますが、これは収入を把握するシステムがある場合にのみ運用できる「難しい」やり方です。
では、昔はどうやっていたか。
まず、「人頭税」というやり方があります。
要するに、どれだけ収入があるか調べるより、その人の年齢で税金額を決めてしまえば考えることは非常に少なくなります。年齢というと面倒に聞こえるかもしれませんが、「成人前・成人後」のみ把握するのが一般的です。老人は扶養家族なのですが、そこは考慮せずに成人扱いするでしょう。
この方法のいいところは、ついでに国民の数を把握できる事です。人口は国力であり、自国の潜在力を現す重要なパラメータです。把握に努めるのは当然でしょう。
逆に欠点は、人口のごまかしが増える事です。人の数が多ければ税金の額も増えるのですから、これは仕方ありませんね。
他には所有する土地で決める方法です。
後述する固定資産税と同じに聞こえるかもしれませんが、これは農家に対し適用される方法です。
つまりは農地の広さから収入を予測し、得られた農作物を納めさせる方法です。
江戸時代の日本でも行われていたやり方ですので、イメージしやすいのではないでしょうか?
利点と欠点は、実際の収入の影響を受けない事です。豊作の時は農家は大儲け、多少余分に持っていかれることはあっても、収入増は間違いありません。ですが、凶作のときなどに普段と同じ量を持っていかれれば死活問題となります。このあたりを配慮してくれるかは領主に因りますが、そのまま持っていかれる事の方が多いと思われます。
消費税というと商品に上乗せされるイメージになってしまいますが、ここではもっと広い意味で使わさせていただきます。
一般的な意味での消費税、ガソリンやたばこ・お酒など特定商品に対する贅沢税、高速道路の利用にかかる利用料、親から子に財産が譲渡されるときに発生する相続税なども、ここでは扱いたいと思います。
すべての商品に対して税金をかける消費税ですが、一般的には悪法と考えられるものでしかありません。
なぜなら、そういった「まんべんなく取り立てる税金」であるなら所得税だけで済ませた方が早いからです。それをせずに消費税にする意味は何か?
簡単なところでは朝三暮四の故事になぞらえた「意識の誤誘導」です。取り立てる場所を変えることで税を少なく見せ、反感をかわないようにするものです。
「消費税反対」の意見が大きく取り上げられるように、意識を逸らせていないではないかと思うでしょう? ですが、所得税の増税と比較してしまえば、こちらの方が反感が小さいと国が判断したからなのです。そして所得税を増やされて反感を持つのは大衆ではなく有力者であることが多く、政治家はそれを嫌ってこのような方法で増税をするのです。
(注意・これは私の個人的見解であり、実際の理由とは異なる可能性があります)
こういった意識を逸らす方法は、他でも行われています。
ファンタジー世界では、この方法も難しいでしょう。取り扱う商品の量を把握したうえで税金を取り立てるのはやはり難しいです。せいぜい、商品を持って町を出入りしたときに追加で税金を取るぐらいでしょうか?
贅沢税というのは、金持ちからより多く金を搾り取る為の方法です。
これは「なくても生活が成り立つであろうもの」に対してかけられる税金です。
金持ちの反感をかうのは怖い事ですが、それでも国民を死なせることは国家にとって損失であり、死なない程度に税金を止めるのはある意味当然の事です。そのため、消費税は高額商品などにだけ追加され、庶民の暮らしが成り立つように税を抑えさせているのです。
贅沢税については固定資産税にも同様にかけられており、これは車の維持費を例に考えてもらえれば分かりやすいでしょうか?
高い車、非経済的な車を持つと、より多くのお金を持っていかれることから分かってもらえるでしょうか?
ただ、車がないと生活できない人がいるのにすべての車に税金がかけられている理由は、「設定された当時はそうでもなかった」というなんとも情けない理由です。昭和初期であれば庶民が車を持つのは難しい事で、憧れであったのです。三種の神器、3C(車、クーラー、カラーテレビ)とまで呼ばれる物でしたからね。それが維持されているというだけです。
ファンタジー世界では宝飾品に対してかければ済む問題であり、取り扱う宝石店などは数が救いと予想されることもあり、取り立ては現実的な範囲に収まると思われます。
利用料については、減価償却、つまりは制作費の補填といった意味合いもあります。
これについては今も昔も変わらず、大きな変化は見受けられません。
作った道や橋を使っているということはその恩恵を受けているという事であり、恩恵に見合った額を持っていこうとするのは領主にとって当然の権利であったと言えるでしょう。町の出入りにお金を取るのもその一環ですね。
水が貴重な土地では水の購入費用の前に、井戸の利用料が課せられていることもあります。この場合は井戸の使用回数であり、汲み出した水の重さはまた別計算であったようです。
他には建物の利用料も考えられますが、主に図書館などの利用料でしか取り立てているイメージやできません。図書館の利用料を税金扱いしているのは、ファンタジー世界で本は貴重だという事が多いので、それを収集した図書館は国家が管理していると考えるのが自然というだけです。
相続税とは、半分は所有権を無理矢理放棄させるための手段です。
金持ちの一族がいつまでも金持ちであり続けないようにするというのが基本理念です。所得税の補完とも言われ、同様に累進課税となっており、ある程度金持ちからしか取り立てないようになっています。日本では1千万円以下の相続から10%の取り立てが発生しますが、手続きを踏むことで控除が可能になっています。100人に4人しか払っていないと言われれば金持ち専用というのも理解していただけるでしょうか。
ちなみに、生前のうちに引き継がせようとする場合は贈与税と言われ、税金逃れ対策を行っています。
ラノベやアニメなどで「両親が死んで相続税が払えず家を出ることになった」という話がたびたび出ているように思いますが、実際はそんなことはありえないと言っておきます。家と土地だけで払いきれなくなることは滅多になく、主に美術品などの相続で相続権放棄が行われる程度です。
固定資産税で分かりやすいのは家と土地ですね。そちらの説明は省きます。他の話をしますね。
昔のヨーロッパなどではトンデモ税が多く散見されます。
私の知っている中で「これは酷い」と思ったのは「ひげ税」です。ひげを生やしていると税金を取られるという、ありえない税金です。他にも髪の長さや色を理由に取り立てがあったという「実話」もあります。帽子や眼鏡などの所有を理由に税を取り立てていたという話もあります。
ようは、身体的特徴を理由に税金を取り立てていたという訳です。無茶をしますよね。
もちろん反発の声が上がり、長く続かなかったようですが。
税金は身近でも、意識の外にあることが多いものです。
ですが題材としては面白いもので、普段冒険者ギルドで狩りをしている連中から領主が税金を取り立てようとするのも考えられる展開ですがやった人はほとんどいません。
上手く使えば自分だけの武器の一つにもなるでしょう。




