テンプレ擁護論⑥ 現代知識チート(料理)
テンプレの一つ、現代知識チート。
「本当にできるのか?」という疑問を持つことが多数ありますが、実際にできる事も多いんですよね。
今回は「料理関係」に的を絞ってその話をしたいと思います。
まず、現代料理・調味料の中で特に多く扱われる物をピックアップします。
・ プリン
・ 白パン(発酵パン)
・ カレー粉
・ サンドイッチ
・ から揚げ(他、揚げ物関係)
・ 味噌と醤油
・ 魚醤
・ マヨネーズ
・ メイプルシロップ
私がぱっと思いついたのはこれぐらいです。他にもあるとは思いますが、それらについては教えて頂ければ対応したいと思います。
これらの料理・調味料について簡単に説明してみます。
・ プリン
卵と牛乳を混ぜて、蒸したお菓子。甘味に砂糖や蜂蜜などを使う。甘味を混ぜなければ味わいは淡白で、そこまで人気は出ないと思われる。
16世紀ごろに造られたのが起源という説があるので、近代のお菓子と考えていい。
・ 白パン(発酵パン)
なろうでは定番の一つ、柔らかな白パン。何気に歴史は浅く、19世紀ぐらいから作られ出した。
柔らかなパンには酵母を使い発酵させるパターンと重曹を使うものがあるが、なろうで一般的なのは前者である。
余談ではあるが、昔のヨーロッパではパンが通貨の代わりとなっていてこともある。江戸時代の日本における米のような扱いと考えてもらえると分かりやすいと思う。
・ カレー粉
18世紀後半、C&B社が作った調味料。もともとは香辛料の扱いに慣れていないイギリス人が規格の一つとして作ったと言われている。昔は今のカレーと違い水っぽかったそうだが、フランスを経由して小麦粉を混ぜたとろみのある今風のカレー粉になった。カレー粉は船乗りがシチューに使う牛乳の代用品として作られた物なので、具材がシチューと似通っているのはそのため。
日本人の考えるカレーを作るには、ターメリックと唐辛子を中心に複数のスパイスを混ぜるのが肝となる。よって香辛料の流通がなされていない場所で作ることは出来ない。ターメリックはインドが主要な生産地なので、採れる場所としては南方が適している。
カレールウとカレー粉の差は脂で、カレー粉にラードなどを足して固形化したのがカレールウ。
・ サンドイッチ
サンドイッチの名前が登場したのは18世紀でいいのですけど、実はそれ以前から「bread and cheese」って名前で作られていたといいます。流行ったのが、そう呼ばれるようになったのが18世紀と言うだけで、新しくありません。歴史は古く、1世紀からあったそうです。なので、パンがあるところでサンドイッチが食べられていないとするのは不自然でしょう。
ただ、フルーツや生クリームを挟んだ物はかなり珍しいはずです。逃げるなら、スイーツ系が良いのではないでしょうか?
・ から揚げ(他、揚げ物関係)
揚げ物の歴史も古く、紀元前の古代ローマにはすでに原型があったと言われています。しかし、油が希少で高価だったことが災いし、広まらなかったとされています。それが日本の江戸時代には菜種油という安価な油が出回るようになり、庶民にも親しまれる今の揚げ物が広まったとされています。
西洋では揚げ物に対する認識が薄く、揚げるという料理概念が一般化されたのは20世紀からです。
中世ヨーロッパで揚げ物はあり得ないでしょうし、油を確保する手段さえあれば人気が出るのではないでしょうか。
・ 味噌と醤油
日本人が求めてやまない味噌と醤油。特に味噌は日本中で作られるほど「簡単に作ることができる」という特徴があります。醤油は気候条件の関係でどこでもとは言えないですけど、味噌を絞った「たまり醤油」などであれば簡単に作れるでしょう。
味噌の作り方は、米麹・大豆・塩を2:2:1ぐらい用意し、米麹と塩を混ぜたものに煮た大豆を冷まして潰したものを混ぜてで2~3ヵ月置いておけば完成です。空気に触れないようにとは書きましたが、途中で撹拌を行うと醸成が促進されて早くできます。
醤油の場合は大豆と小麦を半々で混ぜ合わせたものに麹菌を足し、3~4日熟成してから塩水を足します。ここでできた物を「もろみ」といいます。もろみを2~3ヵ月熟成させ、布などで絞って「生醤油」を取り出します。生醤油から油を捨て、加熱し、沈殿物を取り除いたのが私たちの知る「醤油」になります。
ここでは簡単に書きましたが、他にもいろいろと製法があり、地方色を反映させたのが味噌と醤油です。適当にアレンジしてください。
余談ではありますが、味噌は「穀物の塩漬け」が発祥であり、保存食とも考えられています。似たようなものはファンタジー世界だってあるかもしれません。
・ 魚醤
ワタを取った魚を塩漬けにし、発酵させて液化したものの事ですね。醤油の代用として扱われます。現代日本でも「しょっつる」という名前で売っていますので、気になる人は試してください。
ただ、魚を使うためにチーズに似た臭気が漂うのが難点です。
・ マヨネーズ
卵と酢と油を混ぜ合わせたものに、レモン果汁や塩を加えて味を調えた調味料。これもなろうではよく見かけますね。混ぜ合わせる労力がとてつもなく、関わった人間ほぼすべてが地獄を見るところまでがお約束です。
これについては特に多くを書く必要も無いでしょう。
・ メイプルシロップ
名前の通り、カエデ(サトウカエデ)の木からとれる甘味料です。そのままでは味が薄く使えませんが、煮詰めてみると独特の甘みで人気のある商品です。有名なのはカナダで、国旗にカエデの葉が使われるほど浸透しています。
メイプルシロップはカナダと言われて分かるように、北方における主要産業となりうる可能性を秘めています。
サトウカエデ一本当たり40~80リットルの樹液が採れ、その樹液をおおよそ20分の1まで濃縮されます。つまりサトウカエデ一本あれば2~4リットルのメイプルシロップが作れると考えていいです。中世では甘味が貴重であるため、山一つあれば一財産になるでしょう。
問題は年中採れるものではないことで、2~4月がシーズンとなります。
駆け足で説明しましたが、結論として説明した中で現代知識チートにならなさそうなのはサンドイッチ、実行するのが難しいのがカレー粉、季節に強く影響されるのが味噌・醤油(春から夏)とメイプルシロップ(冬から春)ということで、他は現地の状況にもよりますが問題なくできるのではないかと言っておきます。
食事というのは毎日の事で、常に必要とされるものです。そしてそれだけに大きな商機を秘めています。
上手く使えば戦えない主人公に大金を与えるいい材料になるので、積極的に活用していければと思います。
※ かなり簡略化した説明でしたので、実際にご自身の作品に反映されたい時は、きちんと調べてから使う事をお勧めします。




