シナリオ考察⑧ 冒険者ギルド、その社会的存在意義
ちょっと前に、冒険者ギルドにツッコミを行いましたが、今回はその意見への反撃です。
冒険者ギルドを擁護してみます。
・まず、冒険者ギルドがなぜ必要か。
そもそもギルドという言葉の意味は“相互互助組織”です。互いに助け合うための組織なんですね。
こういった冒険者ギルドが無い場合、「冒険者」が社会的にどうなるか考えてみましょう。
「ただの武装した危険人物」ですね。ありがとうございます。
貴方は、武器を持った誰かが近くにいても平気でしょうか? たとえそれが自分を傷つけない人であると分かっていても、見知らぬ人であれば危険という意識を持つのではないでしょうか?
ですが、そこに例えば「警察官」といった職業を当て嵌めるとどうでしょう? 自分たちを守る側の人間と意識され、持っている武器に「頼もしさ」を感じるでしょう。冒険者もそれと同じで、公的機関「冒険者ギルド」がモンスターから自分たちを守ってくれる存在ですよと呼びかけ、周知徹底することで存在を許されるのです。そうでなかったら武器を持った不審者という事で捕まり、罰せられるでしょう。
貴族など、統治者側が認めた場合は、それは国(もしくは貴族)に所属する兵士となります。任務の内容は横に置きますが、民間企業冒険者ギルドに所属するから「冒険者」という職は成り立ちます。
・では、冒険者ギルドが民間組織であることについて。
なぜ国に所属しないのか、という話です。国に所属すると問題が出ると考えてみましょう。
私の場合、最初に思いつくのが「国家単独で対処できない災厄が起きた場合、多国間で連携を取り、対処するための組織」だからですね。これが――納得してもらえるかは別にして――分かりやすいお題名目です。
その場合は国が抱えてしまうと公平性が薄れ、動きが重くなり、結果として災厄を防げなくなる。そうなると国同士がけん制し合い、うかつに手を出せない状況が出来上がります。
他には、「国」に所属しなくても「神」に所属しているといったケースがあります。
TRPG「アリアンロッド」では神殿が冒険者ギルドとして機能しています。宗教であれば国を越えるのも不思議ではなく、中世ヨーロッパ風異世界であればある意味受け入れやすいと言えるでしょう。
もっとも。
私にしてみると、国であろうが民間であろうが冒険者ギルドは大所帯の組織で、そこに所属するのであれば国でも民間でも結果は大差ないという結論を出しますが。
国の影響を0にするのは無理ですし。
・冒険者が国境を越えたり街に入るのに使うギルドカードについて。
中世ヨーロッパ風ファンタジーが、現代より劣っている必要はありませんよね?
それに、描写されていないだけで、他の組織が似たようなカードを使っていないとも限りません。
冒険者ギルド独自の技術と言ってしまえば国が強制的に接収するかもしれませんが、冒険者ギルドが国以上の組織であれば強制など出来ないでしょう。
また、下手に技術が流出すれば犯罪への応用もされ、改竄や偽造などの行為も行われるという未来は想像に難くありません。冒険者ギルドに限定し運用されることはデメリットだけでなく、メリットもあるのです。
で、そうやって強固な保証能力を持つギルドカードでしたら国家間の行き来にも使われるでしょう。それに、国家間の行き来が出来るというのは互いの国に交流があり、商人などの行き来もあるからでしょう。冒険者だけを例外にしていないだけですね。
確認に使う身分証明の一つと考えれば、そこまで不自然ではないでしょう。
・冒険者ギルドの収入
当たり前ですが、冒険者ギルドは営利団体であるのが普通でしょう。お金が無くても動く組織などありません。
では、「常時依頼」「初心者用」と名高い薬草採取依頼で冒険者が食べていけるのか。そこを考えてみます。
今回の考証には単位として日本円を使用、冒険者ギルドが薬草採取で利益を得ているという前提を用います。たまに初心者救済措置として補助金が出ている可能性もありますけどね、そこは除外します。
宿暮らしの冒険者をサンプルに考えます。安宿1泊3000円、食費1500円とした場合、1日4500円稼がないと生きていけないですよね。最悪は野宿や馬小屋ですけど、それは横に置きまして。あと、装備一式は薬草採取ではほぼ劣化しないものとします。武器を振るう必要はありませんから。
で、そんな初心者が1日かけて4500円分の薬草を集めたとします。これは常時依頼ですので、依頼者は冒険者ギルドです。
冒険者ギルドは、専属の薬剤師、錬金術師に依頼し、そこから傷薬やポーションを作製し、販売します。その販売利益は原価4500円に何が上乗せされるのか。
まず、人件費。ついでに建物税か人頭税かは知りませんが、国や町への各種税金。建屋を作った時の設備投資費。当たり前ですが、ポーションなどの容器も必要ですよね。まあ、経済ネタの基本ではありますが、「人件費・設備投資費・原価・税金」で考えておけば問題ありません。
このうち、税金は国などの対応もマチマチでしょうから、あまり細かく定義できません。そして設備投資費については回収期間の設定次第でいくらでも変動します。適当で申し訳ありませんが、全部同じぐらいとさせていただきます。
こうなると、ポーションの値段は最低でも4500円の4倍、18000円が最低ラインになります。
ここで最低ラインと書いたのは、これに対しさらに「利益」と「売れ残りの損失額」を計上する必要があるからです。利益については言うまでもありませんよね?
「売れ残りの損失額」の説明をします。ポーションが何年経っても使えるなどの特殊性が無い限り、売れ残り古くなったポーションは販売できません。信用にかかわります。そこで売れ残る確率を10%とした場合、その損失を売れたポーションに押し付けて20000円で売らないといけなくなるのです。これで「損失0」のギリギリ経営です。
最終的に利益まで含めれば、25000~30000円が良心的なラインで、50000円が一般的な金額となるでしょう。これを新人冒険者の日給に戻すと、ポーション1個は6日分が良心的、11日分が一般的な値段となります。
何が言いたかったか。物価はちゃんと考えましょう。それだけです。
・冒険者のランク
これは単純に「信用の度合い」ですね。
危険な討伐に行かせる場合、それまでの実績が物を言います。少なくとも、全く見ず知らずの初めて会ったばかりの冒険者にやらせるようでは、その冒険者ギルドは無駄な存在と成り果てます。
ですが、正確な実力を測り、実力に見合った討伐と理解されていてもそれが許されない理由については、やはり信用の問題というしかないです。危険な仕事であれば、その分成功率について考えさせられるものですから、途中で投げ出さない冒険者を使いたいのです。これは低ランクの討伐についても同様のことが言え、「ゴブリン程度なら大丈夫」「オーガ程度なら大丈夫」と段階を踏んで「大丈夫」のラインを引き上げているんですね。ランクは実力よりも実績と、信頼の証と考えましょう。
分業化については、できてないのが「当然」です。
できている場合は、「中世ヨーロッパ風」が「近代ヨーロッパ風」に訂正されてしまいますからね。
分からない人は中世ヨーロッパと近代ヨーロッパの職人について調べてみましょう。分業とそれに伴う工業化の歴史です。
お暇な方は、この反撃に対し、さらにカウンターを狙ってみましょう。もしくは、別種の反撃を試みるか。
その思考は、きっとあなたの物語に活かされると思います。




