テンプレ擁護論④ オリジナリティ
小説を書くときに、気を付けなければいけないことは多々あります。
その一つに、「自分の作品にはオリジナリティがあるか」というものがあります。
作家の皆様。「自分の作品はここが違う」と言い切れる部分を考えてみましょう。きっと、その方が面白い話になると思います。
さて、一言でオリジナリティと書きましたが、それをどのように表現するか考えてみましょう。
誰も書いたことのないような文を、ただ書き連ねれば良いのでしょうか?
私は、それは違うと思います。
ある程度はテンプレ、お話しの基本に沿った内容の中で、人と違う部分を意識するのがベターだと思っています。これは私見ですので、絶対に正しい意見とは言い切れません。ですが、そう大きく間違っていないはずです。
なぜテンプレを使うべきなのか説明したいと思います。
まず、テンプレというのは「作者と読者との共通言語」となります。
異世界トリップでチート持ちの主人公。盗賊に襲われている馬車があれば、そこにはヒロイン候補が乗っていると思いますよね?
シチュエーションが使いまわされたものの場合、ある程度の説明で読者はその先を予測します。そのまま予測通りに話を進めヒロインを出すも良し、あえてヒロイン不在にするも良し。テンプレであるが故に、読者の思考を誘導できます。「テンプレ乙」と思わせるか、「ヒロインはいないのかよ!?」と思わせるも、作者の掌の上。
展開だけがクローズアップされているように見えますが、シチュエーションだけではありません。小者臭漂う悪役、分かりやすい傲慢な貴族、カッコいいライバル、攫われるヒロイン。これらは少ない説明で読者の想像を掻き立てる「テンプレキャラ」です。彼らの登場も読者にストーリー展開の予想をさせるパーツになります。
シチュエーションとキャラを組み合わせれば、読者が予想する展開も想像できるというものです。
そうやって、予測される展開の「どこを裏切るか」がオリジナリティだと、私は考えます。
召喚勇者モノで、普通なら「人間の王像に召喚され、魔王討伐に行かなければいけなくなる」展開が「テンプレから逸脱しない展開」なら、「他種族に召喚され、悪の人間と戦う」といった展開がオリジナリティのある話になります。……最近は、こっちの展開も増えましたけどねー。
異世界召喚というテンプレは、あえて人間同士の戦争に使う展開や、召喚主に捨てられる展開、その他、出尽くした感はあります。こうなると独自の方向性を探る作者様の苦労は並大抵ではありません。ほとんどネタは出尽くしているため、新しい展開のはずも「~~の派生か」程度にあしらわれ、日の目を見なくなる……。とても、難しい問題となります。
そうなると、あえて異世界召喚をやるのなら「このテンプレでないとできないネタか?」と考える必要がでてきます。
こだわる理由は?
それを突き詰めていくと、やはり自分の書こうとする話の根幹、「テーマ」につながるわけでして。オリジナリティから少し逸れてしまうのですが。テーマを優先すればオリジナリティよりもしっかりした芯がある話を書けるでしょうし、それはそれで傑作につながる可能性が否定しきれない……。
変な方向に話が進んだので、一旦軌道修正します。
チラシ裏といわれる小説と違い、一般公開する小説というのは、「読者を意識する」事が大事だと思います。
だとすれば、読者視点で「オリジナリティのある作品」を書こうと思えば、自然と読者の反応を予想しながらかければより良い作品になる可能性があります。意識しすぎるのは悪いことですけど、全く意識しないのも、ね。あまりよろしくありません。
オリジナリティを出すことに囚われて、読者を置いてきぼりにする展開ばかりでは、途中で投げ出されるかもしれません。
テンプレ最強チート主人公でも、「最強」であって「絶対に負けない」とは保障されていません。数で攻めるとか、心理戦を仕掛けるとか。殺りようはいくらでもあります。「主人公最強」タグに釣られた読者を裏切ってしまうのも、嘘を吐くことなく実行可能です。ただ、このやり方を繰り返せば、読者が離れていくことも予想できますよね?
うまく、要所要所で裏切るのが大事なのです。
冒頭か、クライマックス直前辺りが狙い目らしいです。
最後に。
こんなことを書いていますが、作者がテンプレを使いこなしているかと問われれば、目線を逸らしたくなりますので、ツッコミ無用でお願いします。




