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忘れやすい男

作者: 湯気

俺の友人はよく物事を忘れた。

特に病気というわけではない。しかし、一定の時間が経つと色々なことを忘れてしまうのだ。唯一の救いはその忘れることは友人にとってどうでもいいことであることだった。おそらくそういう体質なのだろう。

「俺は、今日からメモを取ることにする」

「え? メモ?」

それは突然の宣言であった。あまりにも脈絡がなかったため思わず聞き返してしまった。

「メモを取れば俺のこの忘れっぽい性格もきっと補うことができる。今日は何か約束ってあったか?」

「いや、お前の予定はあんまり知らんが確かお前、今日は数学の補修とかいってなかったか?」

「おお、そうだった。危ない所だったぜ。よし、メモしとこう」

友人はペンを走らせる。そこには既に幾つかの項目が書かれていた。友人も忘れないために色々と努力しているのだろう。

「他にも何かあるっけ?」

「そうだな……後は……」

俺は、友人に協力するためここ数日間での友人との会話を思い出した。


「よし、取りあえずこんなもんかな」

一通り書き終え、友人はメモ帳をしまった。

「これでお前の忘れ癖も治るといいんだけどな……」

「まあ、メモ帳がある限りはたぶん大丈夫さ。それじゃあ俺は補修行ってくるな。じゃあ、また明日」

「おう。頑張れよ」

挨拶をかわし俺たちは別れた。おそらく勉強もしてないのだから結果は散々なものになるだろう。


次の日、友人が学校に来たのに気付き話しかけた。

「よう。メモ帳は活用してるか?」

「メモ帳? 何のことだ?」

とぼけたように友人は言った。

物事を忘れないためのメモ帳の存在を忘れたのだ。しかし、こうなることはおおよそ予測できていた。教えてやれば思い出すだろう。

人間は、誰だって忘れることはある。友人の場合はそれが少しひどいだけだ。

「というかお前誰?」

しかし、その事実は忘れてはいけないことではないだろうか。

お読みいただきありがとうございました。


メモを取ったことを忘れてしまう自分の性格をより酷くしたことで生まれた作品です。


コメディーなのか微妙ですがたまにはSF以外も書きたかったので書きました。

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