5.見解の相違と目覚め③
それでも、なんとか生きていたというのに。気付けば森から飛び出していた。そして拓けた場所だからと油断し、あんな間抜けすぎる死に様を晒すとは……
死んでしまってからの事など、知る筈もなく。きっと追いかけてきていた狐にでも食べられたのだ、そう思っていた。…………。――まぁ、何と言うか…あんな性悪共の血肉になるより、困っていた人の助けになったのなら、まだマシだったと思うべきだろう。
二度目に生まれたのは、どこまでも続く草原。生後間もなく、また私はひとりぼっちになった。家族は皆、茶色の野ウサギだったが、私だけは異端。だから無難という言葉だけで片付ける事も可能な話。丈の低い草に覆われた大地で、真っ白な私は恰好の標的。一緒に行動していれば、狙われる確率は倍増する。私だけの為に多大なリスクを負うより切り捨てる方を選ぶ。自分自身でも容易に結論が出てしまったから、家族の選択は当然の行動だった。
しかし、普通ならすぐに野垂れ死ぬのかもしれないが、過去の記憶を持った私は大きくなるまで、しぶとく生き延びたのだ。そして更なる安全を求め、遥か遠くにそびえそびえ立つ、木々が生い茂った山を目指した。今度こそ平凡な日々を手に入れ、暖かい家族に囲まれて過ごす穏やかな老後と、平和に迎えるだろう寿命を夢見て――‥
だから、ある程度の苦難は予想していたが、あんな結末を迎えることになるとは、夢にも思わなかった。
道中の出来事は省かせてもらう。色々あったのだ。そう、色々と(虚ろな眼)苦労の末、やっと森に辿り着いた頃には、一冬を越えて春の芽吹きが訪れていた。出発したのは初夏。自身の無力さ加減を痛感するが、無事に到着しただけ上出来――――だというのに。
熊の子供に捕食された。その事実こそ偽りのない真実。だが、経緯はだいぶ違う。私は誰かの為に自ら命を絶つような聖人君子、ではない。けれど、目の前で消えそうな命の灯火を無視できる程、冷徹にもなれなかった。間抜けにも凍っている湖の落とし穴にはまった弟と、岸でオロオロと助けを求める姉に手を貸したのだ。逃げられるであろう距離をとり、少し知恵を貸しただけ…のつもりだった。長い蔓草か枝を用意させ、お互いに端を銜えて引っ張り上げれば良いと。しかし姉弟は生まれて間もないのか体格に大差はなくて、彼女の力だけで助け出すまでには至らず、食べたりしないという姉の言葉に、微力ながら協力したのだ。言い訳の様だが、完全には信用していなかった。結局、彼女に襲われ、捕食されたのだ。体力を消耗した姉弟が眼前にある恰好の獲物を見逃してくれるなんて、野生動物の正しいあり方ではないと自覚している。だから恨んでこそいないが……後味は最悪というものだ。
自分の甘さを身にしみて実感する人生だった。
お久しぶり過ぎて、大変申し訳ありません(T¬T)もう少し、後2話くらいで回想は終わらせる予定です。他お相手との出会いなどは、人間ver.で接触してからに…行き当たりばったりな鈍足でスミマセンッッ(吐血)