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白の少女は三人の男に愛される  作者: 有氏ゆず
第一話 少女は学園へ入学する
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1-8




まふゆはミカゲの言葉に素直に頷き、その背中を追う。

図書館を出て、大樹の麓へ。鐘楼の最上階へ。そして、誰も寄り付かないような学園の片隅へ。


ミカゲは常に最短ルートを知っており、一切の無駄なくまふゆを導いた。道中、他の生徒と出くわすことは一度もなかった。まるでミカゲが意図的に避けているかのように。




そして……最後のひとつまでやってきた。


夕日はほとんど沈み、空は深い藍色に染まり始めている。最後の石碑は、学園の裏手にある古い霊廟の中にあった。ひんやりとした石の床を踏みしめ、二人はその奥へと進む。


霊廟の最奥。

そこには月明かりに照らされた、七つ目の石碑が静かに佇んでいた。

まふゆがノートと筆を取り出し、最後の文字を写し始めようとした、その時。




カツン、と霊廟の入口から硬質な靴音が響いた。一人ではない、複数の足音。


ミカゲが即座に反応し、音もなくまふゆの前に立つ。その手にはいつの間にか、闇から溶け出したかのような黒い短剣が握られていた。彼の全身から放たれる殺気は、これまでとは比べ物にならないほど鋭く、冷たい。


月明かりを背に、入口に現れたのは三人の人影。

中央に立つのは、柔和な笑みを浮かべた担任教師、エドウィン・ヴォルクシュタイン。そしてその両脇には、屈強な体格の男たちが控えている。学園の警備兵の制服を着ているが、その雰囲気はただの警備兵ではない。




「やあ、二人とも。こんな場所で奇遇だね。課題はもう終わりかい?」


その声はいつも通り穏やかだが、目が笑っていない。彼の視線は、ミカゲの背後にいるまふゆに真っ直ぐに注がれている。


「……何の用だ、教師」


ミカゲが地を這うような低い声で問いかける。黒曜石のような瞳が、獲物を狙う獣のようにエドウィンを睨みつけていた。




「はい、先生。ミカゲさんのおかげで、うちらはここで終わりなんです」


ミカゲの背後から、まふゆの明るく無邪気な声が響く。

その言葉に、エドウィンは満足そうに笑みを深めた。だが、その目は一切笑っていない。


「そうかい、それは素晴らしい。流石はミカゲ君だ、効率がいい」


彼はわざとらしく感心したように言うと、一歩、霊廟の中へと足を踏み入れた。両脇の警備兵もそれに続く。じりじりと、距離が詰められていく。


「だが……残念ながら、君たちの課題はまだ終わりじゃないんだ、まふゆ君」


その言葉に、まふゆが「え?」と小さく声を漏らす。

エドウィンの視線が、ねっとりとまふゆの全身を舐めるように動く。特に、その胸元に一瞬、歪んだ光が宿った。


「私からの『特別課題』が残っている。……さあ、少し話をしようじゃないか。その影人から離れて、こちらに来なさい」


声は穏やかだが、有無を言わせぬ響きがあった。

エドウィンの言葉に、ミカゲの殺気がさらに増す。短剣を握る手に力がこもり、いつでも飛びかかれるように低い姿勢をとった。




「……断る。用があるなら俺が聞く。こいつに近づくな」


地を這うような声で、ミカゲが明確な敵意を返す。

霊廟の中の空気は凍りつき、一触即発の緊張が支配していた。エドウィンは面白そうにその光景を眺め、ゆっくりと片手を上げる。


「おや、反抗的だね。だが……残念ながら、君に拒否権はないんだよ、ミカゲ君」


彼が指を鳴らした、その瞬間。

霊廟の天井や壁の影から、ぞろぞろと黒いローブを纏った者たちが姿を現した。その数は十人以上。全員が、エルフを素材にしたと思わしき、禍々しい魔力を放つ魔導機を構えている。


完全に、包囲されていた。




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