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「こ、こんなん……こんなんうちらじゃ無理……絶対に無理や……!」
まふゆの悲鳴に近い呟きが、激しい戦闘音の合間に響く。
彼女の言う通りだった。紫の魔力に染まったゴーレムは、もはや試験用の魔導兵器ではない。その圧倒的な破壊力と異常な耐久性は、最高ランクであるSランク冒険者ですら苦戦を強いられるレベルに達していた。
Gランクの新入生たちにとっては、死を意味する存在だ。
その絶望的な状況を、三人の男たちがそれぞれのやり方で覆そうと必死に抗っていた。
「まふゆ!後ろに下がってろ!俺から離れるな!」
吹き飛ばされた衝撃で口の端から血を流しながらも、レオンハルトは即座に立ち上がり、まふゆの前に立ちはだかる。まるで彼女を守る盾になるかのように。
「ただの石人形が…!調子に乗るなァ!!」
彼は咆哮し、再びゴーレムへと斬りかかる。その剣筋は先ほどよりも荒々しく、しかし一撃一撃にまふゆを守るという強い意志が込められていた。
「くっ……!試験官は何をしてるんだよ!なぜ結界を張らないんだ!?」
セリウスは魔術を連続で放ち、ゴーレムの注意を引こうとする。だが、強化された魔力耐性を持つ巨体には、牽制以上の効果がない。
彼の視線が、恐怖に顔を強張らせるまふゆに向けられる。
(だめだ……彼女を怖がらせちゃいけない……僕が、僕がなんとかしないと!)
焦りが彼の冷静さを奪いかけるが、まふゆの存在が逆に彼を踏みとどまらせていた。
ミカゲは、無言だった。
彼は一度距離を取り、冷静に戦況を観察する。そして、最も効率的にこの状況を打破する方法を探していた。
(……核だ。あの紫の光を発している胸の水晶。あれを破壊すれば、動きは止まる)
しかし、それはゴーレムの最も強固な正面に位置している。レオンハルトですら近づけないあの位置に、どうやって攻撃を届かせるか。
彼の視線が、後方で震えながらも懸命に立っているまふゆに移る。
(……こいつの力が必要だ)
ミカゲは静かに決断を下す。それは、彼らの常識を、そして彼自身の存在をも賭ける、危険な賭けだった。
彼は、まふゆの足元の影から、音もなく姿を現した。
「まふゆ」
低く、しかし切迫した声で、彼は彼女の名を呼んだ。
「俺に、もう一度あんたの力をかけろ。今度は、もっと強く」




