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午後の授業の開始を告げるチャイムが鳴り響き、生徒たちは一斉にそれぞれの更衣室へと向かった。
女子更衣室は、期待と少しの恥じらいが入り混じった、華やかな熱気に包まれている。
「ねえねえ、まふゆちゃんの水着、どんなの?」
「きっと可愛いんだろうなー!」
女生徒たちに囲まれながら、まふゆは少し照れつつも、受け取った箱を開けた。
中に入っていたのは、彼女の雪のように白い肌によく映える、淡い桜色のフリルがついたセパレートタイプの水着だった。
アルビノエルフの繊細な肌を守るため、生地はシルクのように滑らかで、胸元や腰回りには治癒魔術の効率を高めるための小さな銀糸の刺繍が施されている。
そのデザインは、彼女の純粋な魅力を引き立てつつも、形の良い胸や細い腰のラインを柔らかく強調していた。
「わー!やっぱり可愛い!」
「似合いすぎだよー!」
友人たちの称賛に頬を染めながらも、まふゆは手早く着替えを済ませる。
「……?」
しかし、いつまで経っても水着に着替えようとしないシャノン。まふゆは心配で、彼女の元へと駆け寄る。
「シャノン、さん?何で着替えへんの?」
「あ、あっ……き、着替える!着替えるけど……!」
いつものシャノンならまふゆの水着姿に内心、心を踊らせていたに違いない。
しかし、今のシャノンは違う。そんな余裕が無い。
「……まさか、水が苦手なん……?」
まふゆの言葉に、シャノンがビクリと身体を震わせる。どうやら図星のようだった。
獣人の種族にもよるが、猫族の彼女はどうも水が苦手らしい。
「……そ、そうよ!悪い?」
ついつい、憧れのまふゆに対してもキツイ口調になってしまうシャノン。言ってから後悔する。
「……あ、ごめ……」
「ううん、悪ない。うちも泳ぐん、初めてやし」
シャノンが謝罪の言葉を口にする前に、まふゆはにっこりと微笑む。
「……そう。初めてなのね」
「やから、うちも多分泳げへんと思うから、恥ずかしがることないて」
まふゆはそう言って、更衣室を飛び出した。
初めてのプール、初めての水泳授業。その期待に胸を膨らませて。
「ほな、お先に」
ぺたぺたと裸足で廊下を駆け抜け、太陽の光が降り注ぐ屋外プールエリアへと走り出る。
ザシャァン!と、誰かが豪快に水飛沫を上げる音。生徒たちの楽しそうな歓声。
そして、肌を焼くような夏の陽光と、塩素の独特な匂い。
そのすべてが、まふゆにとっては新鮮だった。
先にプールサイドに出ていた男子生徒たちの視線が、一斉に走り込んできた一点に集中する。
レオンハルトは、すでに上半身裸でストレッチをしながら、友人たちと談笑していた。
鍛え上げられた肉体は、男子生徒たちからも羨望の眼差しを集めている。
しかし、白と桜色の水着をまとったまふゆの姿が視界に入った瞬間、彼の動きはピタリと止まった。
(なっ……!? あれは……)
白い肌と、水着のコントラスト。
普段の服では隠されていた、たわわな胸の存在感と、くびれたウエスト。
その健康的な眩しさに、彼は思わず目を逸らし、ごくりと喉を鳴らした。
セリウスはプールサイドの日陰で、ラッシュガードを着るべきか本気で悩んでいた。肌を晒すのが恥ずかしいのだ。
そんな彼の目に、無邪気に駆けてくるまふゆの姿が飛び込んでくる。
(うわ……っ!?)
セリウスは顔をカッと赤く染め、慌てて視線を逸らした。
しかし、残像のように焼き付いた彼女の姿が頭から離れない。
可憐なデザインでありながら、隠しきれていない豊満な胸の揺れ。そのアンバランスな魅力に、彼の心臓は早鐘を打ち始める。
ミカゲは、誰の目にもつかないプールの隅、建物の影に溶け込むようにして立っていた。
全身を覆う、光を吸収する特殊素材のラッシュガードとハーフパンツを身につけている。彼は水に入るつもりなど毛頭なかった。
ただ、まふゆを監視するためだけにそこにいる。
そして、現れた彼女の姿を、影の中から射抜くように見つめる。
(…………)
表情は変わらない。しかし、その黒い瞳の奥で、独占欲の炎が明確な形を持って燃え上がった。
他の男たちの、いやらしい視線。その一つ一つを、彼は正確に把握していた。
(……どいつもこいつも、その目を抉り出してやろうか)
静かな殺意が、彼の周りの影を濃くした。
三者三様の想いが渦巻く中、まふゆはまだそれに気づかず、プールサイドに駆け寄ると、キラキラと輝く水面を見つめていた。




