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ホームルームが終わり、生徒たちが思い思いに騒ぎ始める中、教室の前方の扉から、大きな箱をいくつも抱えた係の生徒が入ってきた。
「みんな、注文してた水着が届いたぞー!」
その声に、教室の喧騒は期待に満ちたものへと変わる。
そう、この学園では、種族の特性に合わせて水着はオーダーメイドで作られるのが基本だった。
伸縮性、耐水性、肌への影響、そして魔力伝導率。それぞれに最適化された素材とデザインが用意されるのだ。
係の生徒が名前を呼び上げ、一人一人に箱を手渡していく。
「レオンハルト・アルヴァレイン!」
「ああ」
レオンハルトが受け取った箱は、シンプルで実用的なデザインが施されている。
中身は、人間の身体能力を最大限に引き出すための、動きやすさを重視した競泳タイプのものだろう。
彼は中身をちらりと確認すると、特に表情を変えずに自分の席に戻った。
しかしその内心では、まふゆがどんな水着なのか気になって仕方がない。
「セリウス・アルヴァレイン!」
「……はい」
セリウスは少し緊張した面持ちで箱を受け取る。
ハーフエルフである彼の水着は、人間のものより少し薄手で、魔力の流れを阻害しない特殊な繊維で作られているはずだ。
彼はちらりと箱の中身を見ると、すぐに蓋を閉じて、顔を赤らめながら足早に席に戻った。
肌の露出が多いデザインだったらどうしよう、と不安でいっぱいだった。
「ミカゲ!」
「……」
名前を呼ばれても、ミカゲはすぐには動かなかった。
やがて、面倒そうに立ち上がると、無言で箱を受け取る。
影人である彼の水着は、光を吸収し、水中での体温低下を極限まで防ぐ特殊な黒い素材で作られている。
彼にとって水泳など苦行でしかない。
だが、まふゆが水に入る以上、監視の目を光らせるためには自分も入らざるを得ない、と覚悟を決めていた。
そして、ついに。
「水鏡まふゆ!」
名前を呼ばれ、まふゆは「はい!」と元気よく返事をして箱を受け取りに行く。
彼女に手渡されたのは、他の生徒たちのものより少しだけ装飾が凝らされた、可愛らしいデザインの箱だった。
アルビノエルフの繊細な肌を守り、白魔術の治癒効果を水中でさえも発揮できるよう、最高級の素材と技術が用いられている。
その瞬間、三人の男たちの視線が、まふゆが抱えるその一つの箱に、釘付けになった。
「水……。水、ね……」
そんな中、箱を見つめながら憂鬱そうな表情をしているのは……シャノンだった。




