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白の少女は三人の男に愛される  作者: 有氏ゆず
第四話 少女は取り残される
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4-12




あれから、数時間が経過した。


大講堂の中は、息苦しい沈黙と、抑えきれない不安で満たされていた。


断続的に続いていた衝撃音や魔物の咆哮は、いつの間にか止んでいる。しかし、それが事態の終息を意味するのか、それとももっと悪い状況の前触れなのか、誰にも分からなかった。


生徒たちの顔には疲労の色が濃く、教師たちも結界の維持と生徒のケアで憔悴しきっている。

まふゆとリリアは三人に囲まれるようにして、壁際に座り込んで泣き疲れて眠ってしまっていた。


「……君は、座らないの?」

「ええ。あたしは大丈夫」


シャノンも三人に加わるようにして、まふゆとリリアを守るように立っている。セリウスの心配そうな声にも首を横に振るだけだった。


「ノセこそ、少し眠った方がいいんじゃない」

「……馬鹿にするなよ。僕は大丈夫だ」

「ふーん、やるじゃない。男の子」


シャノンの言葉にセリウスは「やっぱり馬鹿にしてるだろ」と顔を背ける。




……そして突如、講堂の扉が外から開かれた。


生徒たちが息をのみ、教師たちが一斉に警戒態勢を取る。そこに立っていたのは、一人の上級生騎士団員だった。彼の鎧はところどころ破損し、煤で汚れているが、その表情には確かな安堵が浮かんでいた。


「報告!学園内の魔物は、騎士団および教師陣によって全て鎮圧された!結界外の魔物の群れも、原因不明だが後退を始めた!」


その言葉に、講堂内は一瞬の静寂の後、わっと歓声に包まれた。

抱き合って喜ぶ者、安堵に泣き崩れる者。長く続いた悪夢からの解放に、誰もが歓喜していた。


まふゆとリリアを守っていた四人も、その報告に安堵のため息をつく。


「……後退、か。ラッキーだったな」

「うん……。でも、どうして急に……」


セリウスが疑問を口にした、その時だった。

講堂の一角で、生徒たちを落ち着かせ、負傷者の手当てを指揮していたエドウィンが、穏やかな声で状況を解説し始めた。


「皆さん、お聞きください。今回の魔物の暴走は、恐らく地脈の魔力が何らかの原因で乱れ、一時的に活性化したことが原因でしょう。魔物たちが統率が取れているように見えたのも、魔力の流れに引き寄せられた結果だと思われます」


彼は優雅な仕草で、まるで講義をするかのように続ける。


「そして、魔力が安定すれば、彼らが本来の縄張りに戻っていくのは自然なこと。学園の結界が見事に持ちこたえ、時間を稼いでくれたおかげですね。まさに我々の勝利です」


その説得力のある説明に、生徒たちは「なるほど」「そういうことだったのか」と納得し、エドウィンの周りには称賛と感謝の視線が集まる。

彼は「いえ、皆さんが冷静に行動してくれたおかげですよ」と微笑み、人々の信頼を一身に集めていた。




……ミカゲだけが、その光景を冷たい目で見つめている。


(……魔力の乱れ、か。都合のいい解釈だ)


彼は、ミノタウロスが内側から現れたこと、魔物たちの瞳が不気味な紫色に染まっていたことを見ている。自然現象などではない、明確な「誰か」の意思を感じていた。


だが、それを証明する術はなく、今はただ、隣で眠るまふゆを守ることだけを考えていた。




こうして、学園を襲った未曾有の危機は、一人の教師の「もっともらしい説明」によって一応の解決を見た。


黒幕は誰にも知られることなく、その微笑みの仮面の下で、自らの計画の「実験結果」に満足げな表情を浮かべている。


六人は、まだ何も知らない。

この事件が、これから始まる本当の戦いの、ほんの序章に過ぎないということを。




第四話・了




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