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セリウスは、人の流れが消えた廊下を一人、駆けていた。
「……まふゆ……どこ……!」
胸の奥が、嫌な音を立てて締め付けられる。
呼びかけても返事はない。足音だけが、やけに大きく耳に残った。
焦りが、思考を鈍らせていくのが分かる。
結界が破られたという異常事態。魔物が侵入している現実。
分かっているはずなのに、今のセリウスの頭の中には、まふゆの姿しかなかった。
「……っ!」
背後から、嫌な気配がした。
振り向くより早く、鈍い風切り音。
反射的に身を捻ったが、完全には避けきれない。
ガンッ、と衝撃が走り、壁に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
視界の端で、紫色の瞳がぎらついた。
ゴブリン。しかも一体ではない。三体。
統率された動きで、じりじりと包囲してくる。
(しまった……!)
注意が、完全に逸れていた。
短剣に手を伸ばすが、体勢が悪い。次の一撃が来れば、間に合わない。
……その時だった。
「……っ、なにボサッとしてんの!」
鋭い声と同時に、獣の影が横から飛び込んできた。
ゴブリンの一体が、横殴りに吹き飛ばされる。
爪が閃き、もう一体の喉元を正確に裂いた。
「えっ……?」
呆然とするセリウスの前に立ったのは、桜のような薄ピンクの髪を持つ少女。
逆立った尻尾、低く構えた姿勢。獣人の少女、シャノンだった。
「チッ……ザコの癖にしつこい!!」
残る一体が襲いかかるが、シャノンは怯まない。
床を蹴り、回転しながら蹴りを叩き込む。
骨の折れる嫌な音がして、魔物はそのまま動かなくなった。
……静寂が訪れる。
セリウスは、遅れて息を吸った。
「……助かった……」
「あんた、そんな顔するほど余裕なかった訳?」
シャノンは腕を組み、呆れたようにため息をつく。
だが、その視線は一瞬だけ、セリウスの無事を確かめるように動いた。
「……!そうだ、まふゆを、まふゆを探さないと!」
突如、セリウスが思い出したかのように叫ぶ。
「はあ!?あんたみたいなのが探しに行ったところで返り討ちにされるだけ!今だってあたしに守られたじゃない!馬鹿じゃないの!?」
「でも、だけど!まふゆは戦えないんだ!早く行ってやらないと……!!」
セリウスの言葉に、シャノンは再度溜息をつく。
「……あんたじゃ無理。あたしが探しに行く」
「……!何を言ってるんだ!君は女の子だろう!?一人じゃ無茶だ!」
「それでもあんたが行くよりマシ!さっさと見つけてきてやるから離し────」




