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「な、なあ、これ……!学園は大丈夫なん!?」
まふゆは三人に守られる形で、困惑しながら問いかける。
都市の結界が破られたという信じがたい事態に、頭が追いついていかない。それでも、今自分たちがいるこの学園のことが一番に気になった。
その問いに、冷静に状況を分析していたセリウスが答える。
「学園自体は、都市の結界とは別に多重の防御結界が張られている。すぐにどうこうなることはないはずだ。でも……」
セリウスは言葉を切り、苦々しい表情で窓の外を見つめる。
「ああ。問題は、その『はず』がもう通用しないってことだ。都市の結界を破るなんざ、並大抵の魔物じゃない。……それに、アナウンスは『魔力反応』としか言っていなかった」
レオンハルトの言葉に、教室の空気がさらに凍りつく。
そうだ。アナウンスは「魔物」とは断定していない。「所属不明の強力な魔力反応」とだけ伝えている。
その時、ミカゲが静かに口を開いた。彼の視線は、一点を射抜くように窓の外に固定されている。
「……いや。あれは、魔物だ。だが、おかしい」
「おかしい……?」
ミカゲの言葉に、まふゆは聞き返す。
彼の瞳には、南東の空が映っていた。その空が、不気味な紫色に染まり始めている。
「……数が、多すぎる。それに、統率が取れすぎている。まるで、誰かに率いられているみたいに────」
ミカゲの指摘と同時に、遠くから地響きのような音が聞こえ始めた。建物の窓がビリビリと微かに震える。
それは、おびただしい数の何かが、一斉に学園に向かってきていることを示していた。
ゴゴゴゴゴゴ……
学園の防御結界が、外部からの無数の攻撃を受け、光の粒子を散らしながらきしむ音を立て始める。
結界の外では、異形の影がうごめいていた。ゴブリンやオークといった低級の魔物たち。だが、その目は一様に不気味な紫色の光を宿し、明らかに普段の彼らとは違っていた。
そして、その群れの後方には、ひときわ巨大な影が佇んでいる。
「総員、戦闘準備!」
「教師は生徒を大講堂へ誘導しろ!」
廊下から、教官たちの怒号が飛び交い始めた。
平和だった学園は、一瞬にして戦場へと変わろうとしていた。




