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まふゆが三人と朝の挨拶を交わし、自分の席に着く。
穏やかな空気が教室を満たしていた。教師が教壇に立ち、いつもと変わらない授業が始まる。
チョークが黒板を叩く音、生徒たちがノートを取る音、時折聞こえる教師の声。
その、あまりにも平和な日常を切り裂くように────
ウウウウウウウウウーーーッ!!
突如、学園中にけたたましい警報音が鳴り響いた。
耳をつんざくような甲高い音に、生徒たちが一斉に顔を上げる。
『緊急警報!緊急警報!所属不明の強力な魔力反応を感知!学園都市南東区画の結界が破壊されました!付近の生徒は直ちに避難してください!繰り返します────』
スピーカーから流れる冷静さを失ったアナウンスが、事態の異常さを物語っていた。
「なっ……結界が破られただと!?」
「そんな馬鹿な!この都市に侵入できる魔物なんて……!」
教室は一瞬にしてパニックに陥る。
椅子を倒す音、悲鳴、窓の外を確認しようと駆け寄る生徒たち。教師も「落ち着け!」「指示があるまで動くな!」と叫んでいるが、その声は上ずっていた。
学園都市の結界は完璧なはずだった。
そして、この近辺に生息しているのは、ゴブリンなどの弱い魔物だけのはず。
その常識が、今、目の前で覆されたのだ。
その混乱の真っ只中で、まふゆの周りにいた三人は、誰よりも早く動いていた。
「ちっ……!とにかく状況を確認するぞ!」
彼は椅子を蹴るように立ち上がると、鋭い視線で窓の外──南東の方角を睨みつけた。
その表情には、焦りよりも戦士としての闘志が浮かんでいる。
「兄さん!……まふゆ、僕のそばから離れないで!」
セリウスも即座に立ち上がり、本能的にまふゆの前に立つ。その手は腰に提げた短剣の柄に置かれ、いつでも抜けるように準備していた。彼の顔には緊張と、まふゆを守らねばという強い意志が見える。
「…………」
ミカゲは警報が鳴った瞬間、すでにまふゆの背後に音もなく立っていた。
彼の体からは微かな殺気が漏れ、その黒い瞳は、教室の混乱ではなく、もっと別の何か──侵入してきた「敵」の本質を見極めようとしているかのように、冷たく研ぎ澄まされていた。
三人は、まるで示し合わせたかのように、まふゆを守る陣形を瞬時に作り上げていた。




