表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の少女は三人の男に愛される  作者: 有氏ゆず
第一話 少女は学園へ入学する
4/71

1-3




「で、さっきの話の続きだが、どこの国出身なんだ?」


教室へ向かいながらレオンハルトが尋ねる。


「あ、はい。うち、桜の国から来たんです。少しでもうちの力が役に立つならええなと思って……」

「桜の国……東方の、美しい島国か。素晴らしいな」


レオンハルトは感心したように頷く。彼の真っ直ぐな称賛に、嘘や下心は感じられない。


「見たところ、君はアルビノエルフか?君のような治癒術に長けた者がいれば、多くの者が救われるだろう。俺たちも人間だからな。怪我とは無縁でいられない。その時は……頼りにさせてもらうかもしれないな」


彼は悪戯っぽく笑いながらそう言った。

その言葉に、隣にいたセリウスがピクリと反応する。


「……兄さんはすぐ無茶をするから。でも、ハーフエルフの僕には白魔術は効きすぎることもある。……君の力は、僕みたいなのにも……その、効果、あるの?」


彼は目を逸らしながら、ぼそぼそと尋ねてきた。ハーフエルフという自分の立場を気にしているのが伝わってくる。その問いには、純粋な疑問と、少しの不安が混じっているようだった。




……ハーフ。

人間と別種族の子として生まれた半端者の存在。特に高潔な一族エルフの血が混ざっているハーフエルフは、相当の差別を受ける。


しかし、兄であるレオンハルトにはエルフの血は感じられない。


「……ああ。俺達は異母兄弟なんだ」

「そうなんや……」


デリケートな話題だ。これ以上踏み込むことができず、まふゆは口を噤む。

それを見兼ねたセリウスがはあ、と溜息をつく。


「……気にしなくていいから。慣れてるし。それよりもさっきの質問、答えて欲しいんだけど?」

「えっと、その……うちも自分の力についてよう知らへんのです。せやからちゃんと学校で学びたいなと……」

「そうか。自分の力を知らない、か」


レオンハルトはまふゆの答えに驚いた様子だったが、すぐに納得したように頷いた。


「なるほどな。それもそうか。希少な種族であれば、比べる相手も少なかっただろう。この学園は、そのためにあるようなものだからな。存分に学ぶといい」


彼は励ますように、力強い笑みを見せる。

一方、セリウスはまふゆの言葉に少し拍子抜けしたようだった。しかし、同時に安堵したような、複雑な表情を浮かべている。


「……そっか。まあ、僕も自分の魔力が他のハーフエルフと比べてどうなのか、よくわからないし……。お互い、これからってことだね」


先ほどのぶっきらぼうな態度は少し和らぎ、どこか親近感を覚えたのかもしれない。彼は少しだけまふゆと視線を合わせると、照れたように俯いた。




「さて、長話もなんだ。教室に行こうか。……ああ、そういえば下の名前は?」


レオンハルトが改めて、優しい声で尋ねる。

人垣はもうすっかりなくなり、三人の周りは静かになっていた。


「ああ、堪忍ね。ちゃんとした自己紹介も無しに話し込んでしもて……。うちは、水鏡まふゆといいます。うちの国は四季が綺麗で、冬の雪のように白い髪ということで、冬からとってまふゆってつけてもらったんです。17歳です。よろしゅう」

「まふゆ、か。冬の雪から……綺麗な名前だな」


レオンハルトは感心したように、まふゆの名前を口の中で繰り返した。その響きと由来を、純粋に美しいと感じているようだ。


「俺は22歳で、セリウスは19歳だ。見てくれは若いが、少しばかり年嵩でな。だが、学園ではお前たちと同じ新入生だ。同級生として、気兼ねなく接してくれ」


彼はそう言うと、親しみを込めてにっと笑う。その笑顔は、年上の余裕と頼りがいを感じさせた。


一方、セリウスはまふゆの名前の由来を聞いて、何かを思うところがあったのか、少し黙り込んでいた。やがて、ぽつりと呟く。


「……まふゆ。……まあ、いい名前なんじゃないの」


少しだけ、素直な言葉が零れる。その視線はまだ少しだけ泳いでいるが、敵意がないことは明らかだった。


「さて、挨拶も済んだことだし、今度こそ教室へ向かおうか。A組の教室は……あっちの渡り廊下を抜けた先だな」


レオンハルトが案内するように前を歩き始める。セリウスもそれに続いた。

二人とも、自然とまふゆがついてくるのを待っているようだ。




その一連の光景を、柱の影から見ていた一人の男の目が、僅かに細められる。


「まふゆ」


その名を、彼は音もなく唇だけで形作った。そして、気配を完全に消したまま、三人の後を追うように静かに歩き出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ