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「え、ええっ!?なんでえっ!?」
まふゆはただただ困惑するしかなかった。
目の前で三人の男たちが火花を散らしている。
しかも、自分がめっちゃ食べたい……と念を送っていた『ユキロン』を巡って。
店主は三人の剣幕とお金の出し合いに完全に固まってしまい、あたふたするばかり。
周りの人々も「なんだなんだ」と遠巻きにこちらを見ている。
「ここは年長者の俺が払うのが筋だろ!お前らは引っ込んでろ!」
ぐいっとお札を店主に押し付けようとする。
「兄さんはいつもそうだ!そういう問題じゃないだろう!まふゆが気まずくならないように、僕がスマートに払うべきだ!」
レオンハルトの手を押し返し、自分のコインをカウンターに置こうとする。
「……うるさい。お前たちの金は受け取らない。俺がこいつのために買う」
ミカゲは二人の腕の間からすっと自分の手を伸ばし、無言でコインを置く。その目は「これは俺の獲物だ」とでも言うように鋭い。
三者三様の言い分で、一歩も譲る気配がない。
ただのお菓子一つが、まるで国の覇権を争うかのような重大案件になっている。
「え、えっと!みんなで買って分けたらいっぱい食べれてええと思います!!」
その言葉は、まるで魔法の呪文だった。
三人の男たちは、ピタッと動きを止め、一斉にまふゆの方を向く。
まふゆは困惑しながらも、必死の思いで笑顔を作っていた。その純粋な提案は、彼らの意地や見栄といったつまらない争いを、一瞬で無意味なものに変えてしまった。
「「「…………」」」
レオンハルト、セリウス、ミカゲは顔を見合わせる。
そうだ。何故その発想がなかったのか。
自分たちが競い合って彼女に一つ買い与えるよりも、全員で買って、全員で分け合って食べる。その方がずっと楽しいし、何より彼女が喜んでくれる。
最初に口を開いたのはレオンハルトだった。彼は照れ臭そうに頭をガシガシと掻く。
「……そ、そうか。そうだよな。うん、それが一番いい」
「……!うん、そうだね。僕たちも一緒に食べられる。名案だよ、まふゆ」
セリウスもはにかみながら、安堵したように微笑んだ。
「……わかった」
ミカゲは短く答えると、すっとカウンターから手を引いた。
三人は改めて、今度は穏やかな顔で店主に向き直る。
「すまない、騒がせたな。じゃあ、これを三つ。金は……ええと」
彼が財布を再び出そうとすると、セリウスとミカゲも同時に動く。
また同じことの繰り返しになりかけたその時、セリウスが提案した。
「それなら、三人で均等に出そう。それなら文句はないだろう?」
「おう。それが公平だな」
「……それでいい」
ようやく合意に達した三人は、それぞれきっちり同じ金額を出し合い、店主に手渡した。
店主はホッとした顔で『ユキロン』を三つ、手早く袋に入れてくれる。
こうして、三人の男たちによる熾烈な(?)戦いは、一人の少女の素朴な一言によって、平和的に終結したのだった。
袋を受け取ったレオンハルトは、少し照れくさそうに、しかし嬉しそうにそれをまふゆに手渡した。
「ほら。お前が言った通り、みんなで食おうぜ」




