表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の少女は三人の男に愛される  作者: 有氏ゆず
第三話 少女は初めての女友達が出来る
37/71

3-12




「ああ、もっと食べたいけどお小遣いなくなってしもた……」


食べ歩きの楽しさも相まって、まふゆは空になったお財布を見つめ、しょんぼりと肩を落とした。


この学園はランク制度を採用している。

ランクは新入生はGランクからスタートで、Sランクが最高。ランクによって支給される金額や、依頼される任務の難易度も変わってくるという制度だ。


Gランクの生徒に支給される金額は、学園都市の誘惑の前ではあまりにもささやかだった。


「はあ……せめてFランクに上がりたいもんやなあ……」


ぽつりと漏れたその本音に、三人は即座に反応した。


「なんだ、金なら気にすんな。言っただろ、俺が払うって」


レオンハルトはあっけらかんと笑い、自分の財布を取り出した。彼の財布は革製で分厚く、Gランクの生徒が持つものとは明らかに違う。

王子という立場だ。学園から支給される以外のお小遣いも存在しているのであろう。


「ランクなんて、次の昇格試験ですぐに上げてやるさ。お前ほどの支援能力があれば、余裕だ。だから、今は気にせず好きなもん食え」


彼はまふゆの頭をわしわしと撫でながら、頼もしく言い放った。


「……ランクは、実力に応じて正当に評価されるべきものだ。でも、今の君のランクが実力に見合ってないのは事実だね」


セリウスは少し考え込むように顎に手を当てた。


「次の昇格試験は、個人戦だけじゃなくパーティ戦もあるはずだ。僕たちと組めば、高評価を得るのは難しくない。……だから、そんなに思い詰める必要はないよ」


彼はぶっきらぼうな口調ながらも、未来の約束をするように、まふゆを安心させようとする。


「…………」


ミカゲは何も言わない。

ただ、まふゆが次に見つめた露店──きらきらと輝く宝石のような飴細工の店──の店主を、じっと見つめている。

彼の黒い瞳の奥で、何かが静かに計算されていた。


(……あの飴、いくらだ?任務一つで、この店の菓子を全て買い占めても釣りがくる)


彼にとって、金銭とは任務の対価であり、まふゆの望みを叶えるための「手段」でしかなかった。彼は無言のまま、自分の懐に忍ばせた学園以前に稼いだ金貨の重みを確かめていた。


三者三様のやり方で、彼らはまふゆのささやかな悩みを解決しようと、ごく自然に動き出していた。




「まあ、お小遣いも無くなったことやし、今日はもう帰ろかな……」


しかし、その言葉とは裏腹に、彼女の視線は近くの露店に釘付けになっていた。

色とりどりの、ふわふわとしたお菓子が並んでいる。看板には『ユキロン』と書かれていた。


(うっ……高い……!でも、めっちゃ食べたい……!!)


どうやらマシュマロみたいにふわふわで、わたあめみたいにじゅわっと口の中で溶けて、ミルキーな味がするらしい。

想像しただけで、口の中に甘さが広がる。だが、その隣に書かれた値段を見て、まふゆは心の中でため息をついた。空っぽのお財布では、とても手が出ない。


その、ほんの一瞬の、しかし切実な視線の動きを、三人が見逃すはずがなかった。


彼女のささやかな願いを叶えてあげたいという強い想い。

それらが三人を同時に突き動かした。




「待て、帰る前にちょっと寄るとこがある!」


レオンハルトはまふゆの手をぐっと掴むと、力強く歩き出した。


「ちょっ、兄さん!強引すぎるよ!……まふゆ、もう少しだけ付き合ってくれる?」


セリウスも慌てて隣に並び、まふゆを気遣う。


「……行くぞ」


ミカゲはまふゆの背中を優しく押し、二人から遅れないように促した。


三人はアイコンタクトだけで意思を疎通させると、まふゆを連れて一直線に『ユキロン』の店へと向かう。




「「「これを一つ(くれ)」」」




三人の声が、綺麗に重なった。

レオンハルトの力強い声、セリウスの少し照れたような声、そしてミカゲの低く静かな声。


店主が驚いて顔を上げる前で、三人はそれぞれ財布を取り出し、カウンターにお金を置こうとして────そこで初めて互いの行動に気づき、火花を散らすような視線を交わした。


「俺が払う」

「僕が払う」

「……俺が」


一人の少女のささやかな願いを巡って、三人の男たちによる静かな戦いの火蓋が切って落とされた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ