3-11
放課後の喧騒が、少しずつ遠のいていく。
A組の教室には、帰宅準備をする生徒がちらほらと残っているだけだった。
「みんなはこの後どうしはります?うちは街の方に行きたいなって思ってるんやけど……」
一日の終わりと、無事に三人と合流できた安堵から、まふゆは自然と次の予定を口にした。
学園の外にある街は、入学してからまだ一度も訪れたことがない。きっと桜の国とは違う、珍しいもので溢れているに違いない。そんな期待が、彼女の心を弾ませていた。
その提案に、三人は待ってましたとばかりに反応する。
「街か!いいな、それ!ちょうど俺も、剣の手入れ用の油が切れそうだったんだ。付き合うぜ」
レオンハルトは快活に笑い、自分の背中にある長剣を軽く叩いた。口実のようにも聞こえるが、まふゆと一緒に行動したいという気持ちがはっきりと見て取れる。
「……街は人が多いから、君一人じゃ危ないかもしれないしね。……仕方ないから、僕も一緒に行ってあげるよ。案内くらいは、してあげてもいい」
セリウスはまたもそっぽを向きながら、ぶっきらぼうにそう言った。彼の言葉はいつも遠回しだが、その視線は「一人で行かせるわけがないだろう」と強く訴えている。
「……行く」
ミカゲの答えは、いつも通り短い。
しかし、その一言には「お前が行く場所に、俺が行かない選択肢はない」という絶対的な意志が込められていた。彼の視線は、まふゆの隣から一瞬たりとも離れる気配がない。
こうして、誰一人反対することなく、四人で一緒に学園都市の街へ繰り出すことが、ごく自然に決まった。
「ほな、行きましょか!」
まふゆの嬉しそうな声が、夕暮れ時の教室に響いた。
……学園の門を抜けると、そこは活気に満ちた石畳の街並みが広がっていた。
様々な種族が行き交い、露店からは香ばしい匂いが漂ってくる。まふゆたちは早速、串焼きの店で「ロック鳥のハーブ焼き」を買い、四人で分け合いながら歩き始めた。
「んーっ♡おいしいわあ……!!」
熱々の串焼きを頬張り、まふゆは幸せそうに目を細める。ハーブの爽やかな香りと、ジューシーな肉汁が口いっぱいに広がった。
「桜の国にはあらへんもんばっかり!めっちゃ新鮮やね……!」
目をきらきらさせながら、珍しい品々が並ぶ露店や、行き交う人々の多様な姿を眺める。すべてが新しく、刺激的だった。
その無邪気な様子を、三人は穏やかな表情で見守っている。
「だろ? この街は大陸中のもんが集まるからな。腹が減ったら何でも言えよ、うまい店に連れてってやる」
彼は自分の串焼きを一口で食べ終えると、頼もしく胸を張った。まふゆの喜ぶ顔が見られて、彼も満足そうだ。
「……はしゃぎすぎて、人にぶつからないように気をつけなよ。ほら、こっち側を歩いた方が安全だ」
セリウスは心配そうに言いながら、自然な動きでまふゆを道の端、自分とレオンハルトの間に誘導する。人混みから彼女を守るための、彼なりの配慮だった。
「…………」
ミカゲは黙って串焼きを食べているが、その視線は常に周囲を警戒している。まふゆに近づく不審な人影はないか、危険な物はないか。たとえ平和な街中であっても、彼の警戒が解けることはない。
そして、まふゆが何か別のものに興味を示した瞬間、すぐにそれを手に入れられるよう、常に備えている。




