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白の少女は三人の男に愛される  作者: 有氏ゆず
第三話 少女は初めての女友達が出来る
34/71

3-9




「う、うちの話より!みんなの話も聞きたいんやけど!」


まふゆは必死にそう言って、助けを求めるように周りの女の子たちを見回した。

真っ赤になった顔でぶんぶんと首を横に振るその姿は、からかわれるのが嫌というよりも、ただただ恥ずかしくてたまらない、という様子だった。


その健気な抵抗に、女の子たちは顔を見合わせてくすくすと笑い出す。


「あー、話逸らそうとしてるー!図星なんだー!」

「いいじゃないですの、ちょっとくらい教えてくれたって!私たち、まふゆさんの恋、応援いたしますわよ!」


「そうそう!」「ねー!」と、囃し立てる声が続く。

彼女たちに悪気は全くない。純粋な好奇心と、仲間意識からくる親しみの表れだった。




そんな中、それまで楽しそうに様子を見ていたイリヤ教官が、ぽんと手を叩いた。


「はいはい、そこまで。あまりいじめると、水鏡さんが可哀想でしょう」


その一言で、賑やかだった恋バナの時間はすっと収束する。

イリヤは悪戯っぽく片目をつむり、まふゆに囁いた。


「……大丈夫。あなたの気持ちは、そのままでいいのよ。答えなんて、急いで出す必要はありませんから」


その言葉は、まるでまふゆの心の中を見透かしているかのようだった。

教官の優しいフォローに、まふゆはようやくほっと息をつく。


医務室は再び、穏やかな治癒術の講義の空気に戻っていくのだった。


















……そして、その頃。


まふゆが穏やかな治癒術の講義を受けていた、まさに同時刻。

第一訓練場では、熱気と闘志が渦巻いていた。


「始めッ!!」


教官の号令と共に、向かい合っていた二人の生徒が激しくぶつかり合う。

一人は大斧を振り回す獣人の生徒。もう一人は、身軽な動きでそれをかわす人間の生徒。

ガキンッ、と激しい金属音が響き渡り、火花が散る。


ここは、五限目「対人戦闘訓練」の舞台。

魔物との戦闘とは違い、相手は同じ学園の生徒。思考し、策を弄し、互いの動きを読む、より高度な実戦形式の授業だ。




その中でも、ひときわ注目を集めている一角があった。


「らぁっ!!」


レオンハルトの振るう長剣が、鋭い風切り音と共に相手に迫る。

彼の相手は、屈強な体格を誇るドワーフの生徒だ。ドワーフは巨大な戦鎚を盾のように構え、レオンハルトの猛攻を必死に受け止めていた。


「ぐっ……お、重い……!なんだこの剣圧は……!」


ドワーフの生徒が驚愕の声を上げる。レオンハルトの剣は、ただ速いだけではない。一撃一撃に込められた重みが、まるで攻城兵器のようだった。


少し離れた場所では、セリウスが冷静に戦況を見つめていた。

彼の相手は、素早い動きを得意とする猫系の獣人。目にも留まらぬ速さで翻弄しようとするが、セリウスは惑わされない。


「……遅い」


獣人の爪がセリウスの喉元に迫った瞬間、彼は最小限の動きでそれをいなし、懐から取り出した短剣で反撃に転じる。その動きは流れるように滑らかで、一切の無駄がない。魔術を使わずとも、彼の戦闘技術が極めて高いレベルにあることを示していた。


そして、ミカゲ。

彼の姿は、訓練場のどこにも見当たらなかった。

彼の対戦相手である生徒は、背後からの殺気に冷や汗を流しながら、必死に周囲を警戒している。


「どこだ……どこに消えた!?」


生徒が叫んだ瞬間、彼の足元の影が、ぐにゃりと揺らめいた。

影の中から、音もなく黒い刃が突き出され、生徒の喉元、寸でのところでぴたりと止まる。


「……そこまで!」


審判役の教官が慌てて声を上げる。


「勝者、ミカゲ!」


影からすっと姿を現したミカゲは、表情一つ変えず、相手に背を向けた。

彼の圧倒的な実力に、訓練場全体が静まり返る。




レオンハルトの「剛」、セリウスの「柔」、そしてミカゲの「闇」。

三人は、まふゆがいなくとも、それぞれの場所で圧倒的な力を見せつけていた。


しかし、その戦いぶりには、どこか焦りのような、早く終わらせたいという苛立ちが滲んでいるのを、彼ら自身だけが気づいていた。


(……まふゆは、大丈夫だろうか)


三人の頭の中には、ただそれだけが共通の懸念として渦巻いていた。




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