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白の少女は三人の男に愛される  作者: 有氏ゆず
第三話 少女は初めての女友達が出来る
33/71

3-8




授業は、和やかな雰囲気の中で進んでいった。


「治癒術の基本は『観察』です。相手がどのような傷を負っているのか、どこが痛むのか、そして……心が何を求めているのか。それを正確に感じ取ることが、何よりも大切なの」


イリヤはそう言うと、魔法で作り出した光の蝶を飛ばし、生徒の一人の腕に止まらせた。蝶が触れた場所が、ふわりと温かい光に包まれる。


「これは精神を安定させる初歩の魔術。肉体的な傷がなくとも、恐怖や疲労で心は傷つきます。戦場では、そういったケアも私たちの重要な役目ですよ」


生徒たちは「わぁ…」「きれい…」と感嘆の声を上げながら、イリヤの指導のもと、光の蝶を生み出す練習を始めた。


まふゆも教えられた通りに魔力を練り上げると、彼女の手からは、ひときわ大きく、そして優しい光を放つ蝶が生まれた。


「……素晴らしいわ、水鏡さん。あなたの魔力は、とても純粋で温かい。どんな相手でも、きっと心を許してしまうでしょうね」


イリヤは心から感心したように目を細めた。




授業の合間、生徒たちがそれぞれ練習に励んでいると、自然と小さな会話の輪が生まれる。


「ねえ、まふゆさんって、桜の国から来たんでしょう?素敵な殿方とか、いらっしゃらなかったの?」


不意に、隣にいたエルフの少女……リュシエルが興味津々といった様子で尋ねてきた。その一言がきっかけとなり、場の空気が一気に華やぐ。


「あ、それ私も気になる!やっぱりエルフの騎士様とか?」


犬族の獣人の少女、ココアも話に参加する。


「午前中の戦闘訓練、見てましたわ!あのレオンハルト様たちと一緒だったじゃないですの!どうなの、ねえ、どうなんですの?」


人間の少女、クラリスまで。


きゃっきゃ、と弾むような声。

さっきまでの真面目な講義とは打って変わって、そこは完全に女の子だけの恋バナの空間となっていた。


「えー、なになに?まふゆんあの三人のうち誰が推しなワケー?あーしにこっそり教えろしー?」


話を聞きつけたリリアがまふゆの肩を組んでくる。


まふゆはレオンハルト、セリウス、ミカゲ……三人の顔が頭に浮かび、心臓が少しだけ、きゅっと音を立てた。




「あ、あう……あの三人はその、入学式の時にやさしくしてくれはって……」


まふゆは突然の質問攻めに、あたふたとしながらしどろもどろに答える。

その言葉と真っ赤になった頬が、彼女の純粋さを物語っていた。


「やさしくしてくれた、だけ?本当に〜?」


ココアからからかうような、楽しそうな声が飛んでくる。


「でも、あの三人って有名人ですわよ!レオンハルト様は新入生代表でしたし、セリウス様はあのレオンハルト様の弟君でしょう?それに、あの影人のミカゲ様という方も、近づきがたい雰囲気なのに、まふゆさんといる時は全然違うって噂ですわ〜!!」


生徒たちは、自分たちの知っている情報を持ち寄って、さらに話を盛り上げる。

まるで、物語の登場人物について語り合うように、その目はきらきらと輝いていた。


「あらあら。水鏡さんは、入学早々、学園の有名人たちをすっかり虜にしてしまったようね」


イリヤ教官が、くすくすと笑いながら茶々を入れる。その穏やかながらも核心を突く言葉に、まふゆはますます顔を赤くして俯いてしまった。


「ねえねえ、結局誰が一番好みなの?やっぱり頼れるレオンハルト様?それともミステリアスなミカゲさん?あ、でも繊細そうなセリウス様も素敵よね!」


矢継ぎ早に浴びせられる、無邪気で残酷な質問。女の子たちの好奇心は、もう誰にも止められないようだった。

医務室は、治癒術の練習の場から、完全に恋バナを楽しむ女子会へと姿を変えていた。




(うう……あたしも入りたい……。でも……)


シャノンだけは、その輪の外側で一人恥ずかしそうにしているのであった。




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