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昼食の穏やかな時間はあっという間に過ぎ去り、午後の授業を知らせる鐘が鳴り響く。
生徒たちはそれぞれの教室へと戻り、五限目の準備を始めた。A組の教室に掲示された時間割には、こう記されている。
【五限目:対人戦闘訓練(第一訓練場)】
※治癒術を専門とする者、それ以外にも希望する者は別プログラム(第一医務室)にて特別講義を行う。
この一文を見た瞬間、四人の間に微妙な空気が流れた。
「……対人戦闘訓練か。腕が鳴るな。だが……まふゆは別なのか」
レオンハルトは少し残念そうに呟き、まふゆの方を振り返った。せっかく連携が取れてきたところだったのに、という思いが顔に出ている。
「特別講義……。治癒術師は戦闘には直接参加しないから、当然の措置だけど……。一人で、大丈夫な訳?」
セリウスは心配そうに眉を寄せた。まふゆを一人にすることに不安を感じている。
「…………」
ミカゲは何も言わない。しかし、その全身から「不満だ」というオーラが立ち上っているのが分かる。
彼の視線は、時間割の「別プログラム」という文字を射抜くように見つめていた。彼にとって、まふゆと離れることは、自身の役割を放棄させられるにも等しい。
まふゆは三人の視線を受け、少し困ったように微笑んだ。
「うちは大丈夫です。それに、治癒術の講義も、ちゃんと受けとかんと」
そう言って気丈に振る舞うが、内心ではやはり心細さを感じていた。
やがて、移動を促す声がかかり、生徒たちがぞろぞろと教室を出ていく。
レオンハルト、セリウス、ミカゲの三人は、名残惜しそうにまふゆを見ながらも、対人戦闘訓練が行われる第一訓練場へと向かうしかなかった。
一人になったまふゆは、掲示されている地図を頼りに、特別講義が行われる「第一医務室」へと向かって歩き始めた。
訓練場へ向かう生徒たちの賑やかな流れとは逆方向の、静かな廊下を一人で進んでいく。
(みんながおらんでも、うち、ちゃんと出来るやろか……)
少しの不安を胸に、彼女は角を曲がった。




