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「あっ、よかったらみんなも一緒に食べへん?」
そう言って、まふゆは自分のスプーンで、大切そうにプリンを少しすくい取る。
そして、まずレオンハルトの皿の端に、こてんと乗せた。次にセリウス、最後にミカゲの皿にも。
彼女にとっては、美味しいものはみんなで分かち合いたい、ごく自然な行動だった。
「お、いいのか?サンキュー、まふゆ」
彼はにかりと笑い、分けられたプリンを嬉しそうに口に運んだ。
「ん、うまいな!ミカゲ、グッジョブだ!」
素直に喜び、ミカゲの功績を称える。そのあっけらかんとした態度が、場の空気を和ませる。
「え……い、いや、彼が君のために取ってきたものなんだから、君が全部食べればいいのに……」
セリウスは戸惑い、頬を赤らめる。まふゆの優しさは嬉しいが、ミカゲの行動の意図を考えると、少し気まずさを感じていた。
それでも、分けられたプリンを口に運び、「……うん、甘さ控えめで、美味しい」と小さく呟く。その視線は、まふゆから逸らされていた。
「…………」
ミカゲは、ただじっと、自分の皿に乗せられた小さなプリンのかけらを見つめていた。
彼は、自分が手に入れたものを、まふゆが他の男に分け与えたことに、ほんの少しだけ眉をひそめる。それは嫉妬というよりも、理解できない、という困惑に近い感情だった。
(これは、あんたのために取ってきたのに)
しかし、目の前で嬉しそうにプリンを頬張るまふゆの顔を見ると、その小さな不満はすぐに霧散してしまう。
彼は何も言わず、分けられたプリンを一口で食べると、再びまふゆを見つめた。
……彼女が幸せそうなら、それでいい。
ミカゲの中で、また一つ、新しい感情が芽生えようとしていた。
「んんーっ♡めっちゃ美味しい……!!」
まふゆはスプーンを口に含んだまま、至福の表情で頬を緩ませる。
蕩けるような甘さと、滑らかな舌触り。幸せが口いっぱいに広がって、思わず感嘆の声が漏れてしまった。
限定品という特別感も相まって、その美味しさは格別だった。
そのあまりにも無防備で、幸せそうな表情を、三人の男たちは三者三様の想いで見つめていた。
(……なんだ、その顔は……)
彼は一瞬、どきりとして視線を逸らす。普段の凛々しい顔つきからは想像もつかない、蕩けた表情。そのギャップに、胸の奥が不意に熱くなるのを感じた。
「そ、そうか。そりゃよかったな」
少しぶっきらぼうな口調になってしまったが、それが彼の照れ隠しだった。
(……っ、無防備すぎるだろ、君は……!)
セリウスは顔を真っ赤にして、俯いてしまう。まふゆのそんな顔をまともに見ることができない。自分の知らないところで、彼女が他の誰かにこんな顔を見せることがあるのだろうかと思うと、胸がざわついた。
「……そんなに美味しいなら、僕の分も君が食べればよかったのに」
口から出たのは、またしても素直じゃない言葉だった。
「…………」
ミカゲはただ、静かにまふゆを見つめていた。
彼女の幸せそうな顔が、彼の報酬だった。
自分が取ってきたもので、彼女が喜んでいる。その事実が、彼の無機質だった心に、じんわりと温かいものを灯していく。
(……また、取ってきてやる)
彼は心の中で、静かにそう誓った。まふゆがまたこの顔を見せてくれるなら、どんな困難があろうと、必ず手に入れてみせると。
穏やかな昼食の時間。
賑やかな食堂の喧騒も、今の四人にはどこか遠くに聞こえていた。




