2-9
授業終了の鐘が鳴り、魔物たちの呻き声が満ちていた森に静けさが戻る。
教官が満足げに頷き、訓練の終了を告げた。
「お疲れ様」
「……疲れた」
レオンハルトの労いの言葉に、セリウスが息をつきながら応える。彼の額には玉の汗が光っていた。
まふゆも、続けて魔術を使ったせいか、心地よい疲労感に包まれていた。しかしそれ以上に、みんなで困難を乗り越えた達成感が心を温かくしていた。
(……なんか皆、仲良うなった気がする……!)
朝の気まずさが嘘のように、セリウスはまふゆの隣で「君の支援は正確だけど、魔力消費が激しすぎる。もっと効率を考えないと」などと、ぶっきらぼうながらも的確なアドバイスをくれている。
レオンハルトは「いや、あそこでの増強魔法は完璧な判断だった。おかげで助かった」と、まふゆの頭を豪快に撫でてくれる。
……そして、あれほどまふゆ以外に興味が無さそうだったミカゲもだ。
教室へ戻る道すがら、レオンハルトが戦い方の反省点をセリウスと話し合っていると、ふとミカゲが口を開いた。
「……お前の剣、もう少し踏み込みが深ければ、一体目を仕留めるのが零コンマ二秒は早くなる」
その静かな指摘に、レオンハルトとセリウスが驚いてミカゲを見た。彼がまふゆ以外の誰かに、それも戦闘技術について話しかけるなど、誰も想像していなかったからだ。
「……ほう。確かに、あの時は少し体勢が高かったか。的確だな」
レオンハルトは感心したように頷く。
ミカゲはそれ以上何も言わず、またいつものように口を閉ざしてしまったが、その変化は明らかだった。
まふゆの存在が中心となり、彼女を護るという共通の目的が、バラバラだった三人の男たちを「パーティ」として繋ぎ始めていた。
まふゆは、そんな頼もしい三人の背中を眺めながら、この学園に来てよかったと、心からそう思っていた。
「あの子……」
そんな様子を物言いたげに遠くから見つめる獣人の少女、シャノン。
彼女はまふゆの方へと歩み寄ろうとするがすぐに踵を返し、何処かへと行ってしまうのだった。
第二話・了




