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とくん、とくん────
耳の奥で、かすかに鳴る心音が、まるで遠ざかっていくみたいだった。
「まふゆ!ダメだ、死なないでくれ!」
必死に呼ぶ声。
双子の片割れである棗の、震えた叫び。
弱っていく心臓の鼓動と、その声を聞きながら、まふゆはぼんやりと思った。
(ああ……棗。そんな顔させてしもて、ごめんな……)
悲しませたくなんて、なかった。
本当は、もっと生きたかった。
こんなにも弱い身体で生まれてしまったせいで、いちばん大切な存在を泣かせてしまっている。その事実が、胸に静かに刺さる。
そして、ふと、別の思いがよぎった。
(棗は、ええなあ……)
好きな男の子に恋をして。
誰かを想って、胸を高鳴らせて。
自分だって、本当は……
普通の女の子みたいに、守られたり、恋をしてみたかった。
(……ふふ)
小さく、心の中で笑う。
(無理やね。うちみたいなんには……)
自嘲と一緒に、意識がゆっくりと溶けていく。
最後に見えたのは、必死に自分の名を呼ぶ、棗の泣きそうな顔。
ごめんね。
それでも、生まれてきてよかった。
そう思いながら────
まふゆは、そっと目を閉じた。




