ひとのかたち
「 よおし、おいたか。なら子ダヌキ、助けてくれた礼に、おまえが最後にわしに『とどけた』ものをみせてやるわ」
「 とどけた のはこの眉毛だ」
「ええから、みてみい。 ―― この社にはな、わしをつかまえとじこめた坊主たちの『呪い』が、まアだのこっておってなア。わしはその『まじない』にながいことつかまっておるんで、つかいかたもしっとるんじゃ。 だからなア、こうやって、だれかが『たすけて』くれれば、おもしろいこともできよるんじゃ。 ここへ、よびたい者の髪や身につけとるものをおいて、名をよばってなア」
「 ・・・え? 『とじこめた』って? 」
ユズスケがニヘエの気配が変わったのに驚くより先に、ニヘエのからだが網のなかで、みちり、と大きくなった。すると、そのからだにくいこんだ網がほぐれ、何十匹もの蛇のように這ってうごきだし、莚においた眉毛をかこうようにとぐろをまきながら、上へ上へとのびはじめた。
「 あ、」
ユズスケは、その蛇のごとくうごく網が、目に見えない『なにか』に隙間もなくまきつきながら上へのびあがっているのに気づく。
『なにか』は『ひとのかたち』だった。
「 みたか、子ダヌキ、おまえの世話をしておる坊主をここへよびだして、わしが頭から喰うてやるわ。この社には坊主どもがかけた『呪い』で、わしは出られんようになっておるが、それなら『わしの呪い』でよんだ者もここから出られんということじゃ。 化けダヌキの世話をするなどよほど『力』がある坊主じゃろオ。さあ、よぶぞ 」
蛇は『人のかたち』の肩まで巻き付き、のこすは頭だけだった。




