まちきれない
だが、それからまたヨツ沼へはだれもこなくなり、ながいながい刻がながれた。
そこへ、ようやく、そのめずらしい気配が近づいてきたのだった。
「 ―― どうだ?わしをたすけるか?」
「わかった、たすける」
ひとの子ではない、化けダヌキの子はそうこたえた。
これは、あのときおのれがじじいにかけられた『のろい』とおなじだ。
返事をしてしまったら、もう、たすけるしかない。
化けダヌキの子は、どうやら寺にすんでいるらしい。しかも、《ニヘエ》がどこかで耳にしたような『ジョウカイ』という坊主といっしょにいるようだ。
はて、どこで名をきいたか・・・
それは思い出せないが、ともかく化けダヌキの世話をするなど、よほど法力があるのだろうが、ものずきな坊主だ。
寺の石をもってこさせて寺と小屋をつなげてやろうかとも思ったが、よく考えればそんな坊主がいる寺とは、まだつなげられるほどの『力』はない。
子ダヌキが、もうじき坊主の眉毛をもってやってくる。
まずは子ダヌキ、つぎにはその坊主を喰ってやろう。
いや、まとめて喰えばいい。
そうすれば、社にとじこめた坊主どもが封じるのに投げたこの網もからだからとれ、いつのまにやら、かたちの変わってしまったからだも、きっと動くようになるはずだ。
くちからたれるよだれが、下にあった目玉にはいっても《ニヘエ》はわらいがとまらなかった。
おうおう、子ダヌキがきょうも震えながらきよったぞ
もっとおびえて怖がれば、喰ったときにさぞうまいじゃろオ
もう、待っていられずに、からだからおもいのままのばせる丸太のようになってしまった首を、壊れてとれた扉のそとへ突き出した。




