ここの漁師
『 ニヘエどん、あんたが魚をとってくれて、わしはこうして沼へはいれたわ 』
とつぜん、ひとつの顔が目をあけて、そう言った。
あのじじいの顔だった。
タヌキがここまで大がかりに化かしてくるのは大したものだが、ひとつひとつが気色悪い。
文句をいってやろうとくちをあけたら、いっきに水がはいってきた。
ごっ ぼっつ
っ、これも、化かされてンのか?
だとしたら、くちいっぱいのこの生臭い味も、さめたらなくなるのか?この息苦しさも?
『 ここの漁師はな、この《沼の神様》から魚をわけてもろオてるんじゃ』
じじいの顔がニヘエをみてわらう。
『 《沼の神様》はかぞえてなさる。 名をきいて、神様が《魚をわけてやったモン》が、何匹もっていったか、かぞえておるんじゃ 』
一人がいちどの漁でもちかえれるのは、十六匹までときめてある。
親方がまとめた漁師たちはそれを守っていた。
それよりおおくもちかえれば、『だれ』が、『どれほど』おおくもちかえったか、数えている沼の神様にはわかっている。




