『底なし』の底まで
すると、あれだけめざしたところへはたどり着けなかったのに、小屋にはあっという間に着く。
やはりそういうことかとおもい、戸をけりとばして中へふみいった。
「 やい、てめえ、タヌキだな?このっ、 」
ぐしゅっつ、とした莚をふんだとおもったら、そのまま足がしずんで、ぼしゃん、と水のなかへと落ちた。
いや、これもきっとタヌキにばかされてるはずだ。
まさか、肥溜めにおとされたか?
そうおもったが、目をあけたら、水のなかのようすがよくみえた。
すぐそこに、あの、じじいの顔がついた舌をもつ蛙が上にのびあがるようにうでをあげてニヘエと同じように浮いていた。水に動かされるようにゆっくりまわるその背には、やはりたくさんの人の顔がイボのようについていて、ありがたいことにいまはどれもみな、目をとじている。
そんな顔を背負った蛙のからだはまるで昆布のようにながく、みおろした底までずっとそのままのびているのをニヘエはみた。
・・・なんだこりゃあ・・・蛙でもねえのか? きしょくわりい・・・
まるで水草のように水のなかで、もったり、とゆれるそれは、ひとの顔をのせたまま、『底なし』といわれるあの『アシ沼』の、ずっとずっと深くまでのびているのか。




