捕まえて鍋に
七、
はしってはしってはしって、はしっているのに、
―― どういうわけか、どの方角をえらんでも、『ヨツ沼』のなかからでられない。
たよりにした月は、みあげるたびにおもってもいない方角にある。
・・・いや、まて。 どうしてずっと、《おなじ高さ》に月がある?
あたりにはまた蛙の鳴き声がもどり、沼はひっそりとしている。
ここでニヘエは、まえに会った流れの博打うちにきかされた、タヌキかムジナに化かされたわらいばなしをおもいだした。
そうだ。堀で魚を釣ると、『おいてけ』とこえがするってはなしで・・・
たしかムジナかタヌキに化かされたって・・・
それに、月が二つでる、きゅうに月が隠れる、なんていうのは、化かされた者のはなしでよくきいた。
「 ・・・そうか、あのじじい、タヌキかムジナだな?」
そうおもいあたると、あそこまでこわがって腰までぬかしたのが思い出されて、腹がたってしかたがない。
この沼地からでられなくなっているのも、あのジジイに化けた『タヌキ』が、月をかってに動かしているからだ。
「つかまえて鍋にしてやる」
正体がわかれば怖くはない。ひきかえすような気持ちで、沼のはずれにあるじじいの小屋をめざした。
たかくでていた月に、雲がかかりはじめていた。




