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ヨツ沼のニヘエのはなし  作者: ぽすしち


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26/44

アシ沼




 六、



 『水もよどんで草がボウボウでな』とあの年寄りがいったとおり、その沼だけ、かこんで生える草の丈がたかく、みっしりとはえていた。



 この草が『アシ』という草なのだろうか。

 

 ニヘエは草や花のなまえなどしらないし、沼の名が草の『アシ』だろうと、悪い方の『アシ』だろうとも、どうでもよかったが、ほかの四つの沼にもあったその草が、その沼だけいやに大きく育っていて邪魔で腹がたった。

 頭より上の高さまでみっしりと生える草は、倒しても倒しても、またまっすぐに立ち上がる。




 なまぐさいのウ



 ほかの沼では感じなかったこの匂いは、あのジジイの家にはいったときにかいだものだ。




 ほかの四つの沼をまわったときとずっと《同じ高さ》にある月が、『アシ沼』の水を照らしている。




 いくら月があかるいとはいえ、その黒い水が澄んでいるのかよどんでいるのかはわからないが、こんなに臭いということは、やはりにごっているのかもしれない。



  ぼ っぢょ ん



 いきなり水の中から魚がはねた。



 背びれのようなものがみえたが、鯉だろうか?だとしたら、かなりのおおきさだ。



 くさい水にいる魚は身もくさいときいたこともあるが、《ニヘエ》が食うわけではなく、売るだけだ。


 魚のはいったビクを置き、網を肩にかけたまま草をかきわけて沼へと近づく。



  『 そこだけ魚はとれん

         ぜったい網をなげいれるなよ。沈んで戻ってこなくなるからのオ 』




  あやうくだまされるところだったわ



 かえったらこんどこそあのじじいを殺してしまおうと、ふところの匕首あいくちをとりだしたが、やはり引き抜けない。

 帰りに漁師小屋をまわって、どこかで包丁をひろってもどろうと、草むらへ役にたたないそれを投げ捨てた。





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