あずかっている
「おれなぞ、ユズスケにさえ文句をいわれておるのになあ」
ごつごつとした指先についた細長い爪で黒くごわついた眉をかき、うれしそうに口の両端をあげたウゴウは、はじめてあったときのユズスケが、怖がって小便をもらして泣いたのを、思い出したのかもしれない。
ユズスケというのは、ジョウカイが知り合いから預かっている《こども》だ。みかけ五つになるかならぬかの『ひとの子』にみえるが、人ではない。
そもそも『知り合い』というのは狸であって、その『タヌキ』は普通の狸ではなくずっと人のかたちになって暮らし、坊主にまでなっていた化け狸であって、その狸の縁者である子ダヌキを、訳あってあずかっているのだ。
ジョウカイの寺にはほかに、オチョウというこどももいる。この娘は狸ではなく狐のほうの縁者であって、預かっているのではなく、寺の手伝いにきてくれているこどもだ。
ふだんユズスケの面倒は、このオチョウがみている。ユズスケもオチョウによくなつき、トンボや蛙をつかまえたぐらいのことでもいちいち伝えにゆく。
そのオチョウにも言わずに寺をぬけだしているとはおもしろい、とウゴウとサゲンは思ったのだろう。
ジョウカイもそう思ったが、《預かっている》てまえ、わらってしらぬふりをするわけにもいかない。




