ながれつく
四、
《ニヘエ》はこの『ヨツ沼』のあたりで生まれ育ったわけではないし、漁師だったわけでもない。
いや、魚はとった。
ここへたどり着いたとき、泊めてくれたのが、沼のはずれにすむ漁師のじいさんだったからだ。
《ニヘエ》は若いころから気をいれて働こうともおもわぬ男で、仕事もひとつのところに落ち着けずに、気づけば、かせいだ金を酒と博打で使い果たすような暮らしに流れ、金をかえせずに名を何度も変えて逃げ回ったすえに、郷から遠く離れたこんなところへついてしまった。
匕首ひとつ懐につっこんで、にげるようにとびだしてから、同じような旅装束で山道をゆく者のあとをつけ、おそって金を奪うまではあっというまで、はずみといえど、刃物を刺してしまったあいてが死んでからは、はじめから殺すつもりで襲うようになった。
だが、そんなことをしていればこんどは山狩りがはじまり、街道も気安くつかえなくなって、おかげで、川を伝って泳いで渡り、けもの道をみつけて山を歩き、どうにかひらけて人目もなく休めるところをとさがしていたら、いやに湿気た土地についたのだった。




