第2章~人魚編~
第1話:孤島の二人
潮風が頬を撫でる。遠くで波が岩にぶつかる音が、孤島の静けさを一層際立たせる。
その島には、二人の少年と少女が暮らしていた。人の気配はほとんどなく、大人はこの島を捨てて去ったのだという。そんな場所に、二人きり。けれど、二人にとっては何もかもが特別な場所だった。
「今日の魚、なかなか大きいよ!」
少年が手際よく釣った魚を、少女は目を輝かせて受け取った。
「わあ……こんなにたくさん! ありがとう、あなた!」
互いに笑い合う声だけが、孤島の広い空に響く。砂浜に座り込んで、二人は分け合った魚をほおばる。笑い声、砂の感触、潮の匂い――何気ない日常のすべてが、宝物のように感じられた。
でも、幸せな時間は、永遠ではなかった。
その日、少年はいつものように釣りに出かけた。「今日は一人で行くよ」と言い残して。少女は少し不満そうに、でも笑顔で見送った――その時までは。
午後になっても少年は戻らない。
「……なんで帰ってこないの?」
少女は砂浜を走り回る。崖の上に立ち、海を見渡す。遠くの水平線を目で追う。胸が締めつけられるように痛んだ。
「まさか……なにかあったの……?」
恐怖と不安で、心臓の音が耳に響く。けれど、答えはどこにも見つからない。島を隅々まで探したが、少年の姿はどこにもなかった。
砂浜に戻ると、少年がいつも釣りをしていた場所に、見慣れぬ光景が広がっていた。水際には、見事な魚が並べられている。大量の魚。少年の手で、ひとつひとつ丁寧に置かれたのだろう――でも、なぜ? どうして置いてあるの?
そのとき、海の奥から小さな船が姿を現した。
少女の胸は高鳴る。希望と恐怖が入り混じり、体が硬直する。
「やっと……助けに来てくれたの?」
船の乗り主は叫ぶ。
「危険だ! 今すぐ乗れ!」
少女の手を引こうとする。しかし、少女は必死に抵抗した。
「だめ、まだ……まだ彼が帰ってきていないの! お願い、助けて!」
涙が頬を伝い、砂に落ちる。必死の懇願に、船主は仕方なく少女を抱き上げる。海面に浮かぶ船の上で、少女は最後に島を振り返った。あの場所で、あの少年は何をしているのだろう――。
船が離れると、島の上には誰もいなかった。荒れる波の音だけが、二人のかけがえのない日々を静かに包んでいた。
時は流れ、十年――少女は大人になっていた。けれど、あの島の記憶は、まるで昨日のことのように鮮明に残っている。
そんなある日、少女の元に一通の手紙が届いた。
「元気ですか……幸せに過ごせていますか……」
封筒を手に取った少女は、手が震え、涙があふれた。文字は懐かしい誰かのもの――少年……いや、もう今は「大事な人」と呼ぶべき存在の手によるものだった。
その手紙には、十年前のあの日から変わらぬ想いが綴られていた。
「君には誰か良い人がいるから、私のことは忘れてほしい。それでも、ずっと君を……愛しています。」
少女はその言葉を読みながら、震える声で呟く。
「忘れられるわけない……もう一度会いたい、あなたに……」
そして決意する。
「……私が、あなたを探す。必ず……。」
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