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ダムの監視

作者:

ダムの監視カメラは、放流設備、周辺道路、水位観測所など、ダムの安全管理上重要な箇所に設置されている。

 監視カメラが出来る前から、そんなダムに投身自殺したり、肝試しに来てゴミを散らかしたり、落書きする輩が後を絶たない。そんな輩を撲滅しようと監視室から週1ローテーションで1人夜勤にて監視をやっている。監視カメラのデータは、向こう3年分は、保存するよう義務付けられており、ネットのクラウドファイルにデータが沢山入っているようだ。

 そんなある日の9:00

  「行方不明者探しの為に2年半前の監視カメラのデータを下さい。明日14時に取りに行きます。」とK県警察からお願いのファックスが来たという。

1年前に入社した本郷 大佑は、未経験から入社し、投身自殺の案件は、ここ1年無かった為、「こんなお願いも来るんすね?ビビります」と他人事のように指導係だった芹田 勇輝に話す。「お前は、こう言う案件初めてか?ここ1年実際に投身自殺が無かったし、警察からの協力要請も無かったもんな。あれ?本郷?」

 その頃、本郷は、呑気に差し入れのミニバームクーヘンを食べていた。芹田が「ちょっと来い。お前は、弛み過ぎだ...。おーい、聞いているかー?」芹田は、自分のデスクまで本郷を引っ張りながら、話す。しかし、本郷は、気持ち良さそうに寝息を立てていた。

  10:00

「すまんが、芹田、本郷、ちょっと来てくれ。」と服部室長に呼び出された。芹田が「はい。今、行きます」と言いながら、本郷を叩き起こし引っ張って行く。芹田は、ビシッと立ち、聞いているが、本郷は、目を擦りながら、聞いていた。服部室長のデスクに行くと「申し訳ないが、警察から協力をお願いされている2年半前のデータを芹田と本郷で今日の夜勤監視をやりながら、探して欲しい。仮眠は、規定時間内なら、しても良いし、夜勤の給料は、良いぞー」と持ち掛けられた。芹田は、「頑張ります。な?本郷?」と乗り気だが、本郷は、「ちょっと怖いっすもん。嫌っす...」と泣きそうな声を出す。服部室長が「'とらや'のどら焼き 極み 10日分追加でどうだ?」と言うと、本郷が「乗ったー!!じゃあ、どうすれば、良いっすかー?」と掌返し。芹田は、「現金な奴」と顔を隠す。室長が「一度帰って仮眠とって来るように。夜勤入りは、16:30。よろしく!」と言うと、芹田が「かしこまりました」と言い、本郷が「了解っすー!」と言い、一度退勤した。

_______

16:00

芹田が出勤し、昼勤の戸坂と喋りながら、準備をする。戸坂が「本郷がビビって来ないに1000円かけますわー」と冗談を言っていると

16:20

本郷が「お疲れ様でーす」とノリノリで出勤。

 芹田が戸坂に「何処かの家系ラーメン奢ってくれたら、良いから。な、気にすんな」と肩をトントンと叩く。

 16:30

申し送りをして、2人とも自分のデスクに行った。

 17:00

昼勤の服部室長が「それじゃ、頑張ってくれ」と言い、戸坂が「せいぜい頑張ってくれや」と手を振って帰って行った。

 本郷が夜勤の監視業務をしながら、芹田がカメラデータを探す。データは、全てクラウドに有る為、3年前のデータから遡り、2年半前のデータを見つける算段だ。データの日付けが細かく見難い為、見つけるのに時間がかかる。途中で交代しながら、夕食を食べた。

 20:43

2年と10ヶ月前まで来た時に数秒間だが妨害電波で砂嵐になった。芹田は、「もう何だ、コレ...」とキーボードを触ると直ぐに直った。本郷は、トイレからの帰りで見てなかったのか「大丈夫っすか?」とあまり気にしていない様子だった。

21:07

2年8ヶ月前までデータを遡った途端にリアルタイムのカメラに白いワンピースを来た黒髪ロングの女性らしき人影がカメラに向かって手を降っていた。次の瞬間、女性がよじ登って向こう側に行こうとしている為、2人で女性が居るであろう場所まで行って確認した。しかし、その場に居なければ、望遠鏡で覗いた貯水池の水面に波紋さえ無かった。2人で「何だったんだろうな?」「分かんないっすね」と話しながら、戻って来た。

 21:54

  戻った後、一旦休憩し、またデータを探す作業と監視を続けた。2年と7ヶ月前のデータまで遡ると先ほどリアルタイム撮影のカメラに写っていた女性と同じような格好の白いワンピースに黒髪ロングの女性がよじ登ってダムの貯水池に落ちて行ったシーンが写っていた。探す作業をしていた芹田が「うわぁ、うわぁ」と慄いていたから、監視カメラを観ながら、本郷が「大丈夫っすか?」と声をかける。芹田が何も言えないでいる為、本郷が掛け寄る。芹田が「悪いな、仕事に戻ろうか」と立ちあがろうとした瞬間、ガンガンと何処からか何かを打つ音がする。2人して探していると音は、リアルタイム撮影のカメラに向かって頭突きする黒髪ロングの女性により出されていた事に気が付く。カメラを見上げた2人は、髪質や肌の青白さがまざまざと分かる程にカメラ前に寄り、黒髪ロングで青白い顔の女性がおでこから青い血を流しながら、微笑を浮かべている事に慄いた。そして、またガンガンとカメラに頭突きする女性。あの監視カメラは、地上から4m離れているはずなのにカメラの目の前に女性が居た。人間ならざるものがすぐそこに居る。2人とも満身創痍で抱きつく。いつの間にか2人とも白目を向き、失神していた。

 

翌日8:02

いつも服部室長が1番に出勤し、夜勤を労いながら、昼勤の準備をするのが決まりだ。服部室長がID翳して防犯指令室に入ると、監視カメラの前で芹田と本郷が抱き合って白目を向いて気を失っていたから、救急車を呼び、搬送して貰った。監視室内には、社員の勤務態度を監視する為のインカメが監視カメラのリアルタイムを映し出す4枚の液晶の中に仕込んである。昨晩のインカメ撮影データを見ると、芹田と本郷がいつものダムの夜の風景が映し出されている映像に向かって叫んだり、慄いたりしている2人の姿だけが映っていた。

 8:28

服部室長が「2年半前の監視カメラデータを探していた夜勤が失神していたので、救急搬送しました。該当データは、確かにコピーし、警察に渡せる状態に有ります。しかし、本部からも『自己責任の上、確認して下さい』と一言伝えて欲しいです。宜しくお願いします」

と本部に連絡を入れた。

 9:30

朝礼後、「今日は、朝から芹田と本郷の失神による救急搬送が有り、みんなを驚かせてしまい、すまなかったな。私も病院に行き、芹田と本郷の様子を見て、本部に寄らねばならないから、直帰予定だ。だから、今日は、臨時休業としよう。皆も早く帰って休めよ」と言い、服部室長は、病院に向かって行った。

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