腹心と準備
・・・ブラック・ガルディオン・・・
「さて、勇者がこちらに住む可能性は五分五分といったところかな」
ブラックは魔国に住めるように家を用意したり調整をしていた。
結界と魔物の配置で鍛錬ができるような場所を用意したりとかなり手厚い準備をしていた。
最強の黒魔法にその達人の結界は、勇者が生きているうちにいくら攻撃しても壊れない性能をしていた。
「長らく一人で居てたが、俺が居なくなった後の調整もしておく必要があるか。久しぶりに腹心と会う必要があるか」
ブラックは基本的に一人で全て事足りていたので、他の者と馴れ合ったりすることがなく、孤独に過ごしていた。そこに人生で一番楽しい遊びがいのあるおもちゃがノコノコやって来たので、これ以上なく充実していることはわざわざ魔国に連れてくることを含め、他の者がみたら明らかであった。見る者がいればであればになるが。
・・・バルディル・ネイビー・・・
私は現在の魔国の中枢に身を置いているが、長らく会うといった連絡がなかった魔王様から久しぶりに呼ばれていた。
現在の見た目は灰色の髪に藍色の目をしている。
「いつぶりだ!こんなに嬉しいことはここ数十年なかった!」
ブラックの立場は魔王になってから象徴や権威となっていた。
どこにも属さず、機嫌を損なうと圧倒的な暴力が降り注ぐといった認識を持たれていた。
そのため魔国自体の政治に口出しは一切せず、国が揺らぐ大きな問題がない限りは出てこない状態になっていた。
その中でも魔王に一番尊敬と畏怖を抱いているバルディルが、より過ごしやすく面倒が起きないように計らっていた。
人間の国に無断で攻め込んだり、魔王がどこにも属さず政治をしないことに文句を言いつける者などをうまく抑えてコントロールしていた人である。
バルディルが魔王を初めて見た時が先代の魔王を討った時であり、その時にこの人に仕えたいと心の底から誓ったところが始まりである。
黒の輝きと魔法の洗練さ、どれにも尊敬を抱いていたのであった。
「私だけ唯一魔王様から頂戴した御加護の感謝をまた直接伝えられる時が来た!では向かうことにしよう! ワープ」
ブラックは神の領域に突っ込んでいるので加護を与えることも可能である。
またブラックの加護は黒魔法の部分的使用権限の解放や魔力の向上、魔法の多様化など恩恵が強すぎるものになっていた。
そのため見た目にも影響が出ており、髪に黒の影響が出ている。以前は青色に近い色をしていた。
その力があるからこそ、バルディルは魔境の魔国で抑え役として活動することができていた。
「近くについたのか?少し風景が変わっているな。魔王様の今回の呼び出しが余計になんのことかわからなくなってきた。」
魔王の結界が強すぎるので近くまでしかワープすることができず、そもそも魔法的移動手段を持っていないものは近づくこともできない孤島に来ていた。
バルディルはここがどこにあるか検討がついておらず、ワープの印を置いているのでこれている状況である。
ちなみに勇者は白と黒の相反した魔力のため、魔国に少し入れば魔王の場所が見えるようになり、そこで白と黒が引き合う、「モノマグネット」の魔法の応用で移動しているから魔王の前まで行けている。
「しばらく待とう」
・・・ブラック・ガルディオン・・・
バルディルを呼び出してしばらく経ったあと、ここの誰かが来た気配があった。
「ん?早速来たか。迎えてやろう」
一人で住んでいるとは思えないほど大きな島になっているが、テリトリーに入ってきたものは一瞬で感知できる力が魔王にはあった。
「よくきたな。とりあえず中で話しをしよう」
二人はワープで応接間のようなところに飛んでいた。
「本日はお招きいただきありがとうございます!お久しぶりにお顔を拝見できて嬉しく思います!」
「早速だが話しを始めよう」
「魔王様嬉しそうな顔をしておりますが、よほど良いことがあったんでしょうか」
「ほぉ顔にでていたのか。それを見るやつも比べるやつもいないから気づきもしなかった」
「良い話しかと思い安心しておりおます」
「そうか。今回はいくつか話しがある。まずしばらくしたらここに勇者一行が住むから認識だけしておけ」
「え!?え、え、どうゆうことでしょうか?」
「勇者はな白魔法使いで、しかも純白だ。こんなにも戦って楽しいことも、それを成長させてやっていることも楽しいとは思わなかった。あの王国が勇者に変な枷や不遇をする前にこちらへ引き込んだというわけだ」
「…とりあえず納得はしていませんがわかりました。それにここに住むのであればバレる心配もいらないでしょう」
「ここはいいところだ。バルディルもよくやってくれていて助かるよ」
「もったいなきお言葉です」
「俺はまたしばらく勇者と遊んでいるから何かあったらこちらに来てくれ。たまに勇者と遊びたければ来てもよいぞ。今のお前で勝てないかもしれんがな」
「たまに伺わせていただきます」
「勇者の話しは終わりだ。次に宝物庫の存在を教えておこう」
「宝物庫、ですか?」
「マスターキーを作っておいたからこれを渡そう。無くすでないぞ。場所は気づかれないと思うがもしバレたら、見つけたやつがこの世界を征服しかねない」
「そ、そんなものがあったのですね」
「持ってみろ。多少は黒が使えるのであれば、持てば場所がわかるはずだ」
「頂きます。…っ!この島の中心付近にあるものですか?」
「あっている。見たければ帰る前にでも見てこい。好きに持っていっても良いが面倒を起こさない程度にしろよ」
「承知しました。一つお伺いしてもよろしいでしょうか」
「なんだ」
「なぜここを私に教えていただいたのでしょうか。あまりにも突拍子がなかったもので…」
「あぁ、まず今後勇者が暴走することがあったら止めれる可能性を作っておきたかった。それにもう数十年したら俺死ぬことにしたから」
「ど、ど、どういうことですか!?魔王様が?なぜ死ぬのですか!?」
「落ち着け。」
「…ご理由をお聞かせもらえますか」
「理由か。勇者との戦いが楽しめるピークだと感じたからな。もう飽きたし疲れたよ」
「な、なるほど?」
「もう俺は魔国も背負いたくないし、お前のおかげで落ち着いてきているからな。もういなくてもいいだろ」
「私としていつまでいて欲しいと心から思っております!」
「そうか。なら待て。俺は転生することにしたからな。次俺が誕生するまでうまくやってみろ」
「転生!?そんなことが可能なんでしょうか!?」
「できるぞ。だがいつの時代に生まれるかは全く予想はつかん。それにどの種族になるかもわからん」
「魔法は奥が深いですね」
「それでだ。お前にやって欲しいことがある。もちろん先ほど言った次の誕生まで今まで通りにすることも含めるが」
ここでブラックはバルディルに向けて魔法を発動した。
「魔王様、これは一体なんでしょうか」
「黒の加護を最上級でつけてやった」
「!?」
「ほう。髪もほぼ黒に近くなってきたな。皆には上手く誤魔化せよ。ははは!」
「わ、私にこのようなお力を…!ありがとうございます!!!一生約束を違えることなく忠誠を改めて誓わせていただきます!」
「頼むぞ。それでだ。俺が死んだ、まぁ転生した後だな、お前はここに住め。名目は宝物庫を守り抜け」
「!!!。承知しました!」
「それに勇者には国を簒奪させるからここからいなくなる」
「それはいい案ですね!あの国うっとしかったので、勇者が簒奪すると国をあげてこちらに向かってくることはなくなるでしょう」
「そうだな。そしてここの存在がバレないようにしろ。この孤島は魔国の上空にあるから普通気づかれることはないが、移動が多いと勘付くものも出てくるかもしれないからな」
「新たな抑え役を作れということでしょうか」
「そうだ。数十年もあれば形になるだろう。俺が死んだことは公にせずこと進めてもらいたい」
「今回いただいた御加護があれば分身も可能かと思いますので、上手くやってみます」
「頼んだぞ」
「必ず次回誕生されるまで守り抜いて見せます」
「話しは以上だ。宝物庫みていくか?」
「はい!気になるのでみさせてもらいます!」
「そうか」
ブラックはバルディルを見送ったのであった。