映画館
「やはり映画はレイトショーに限るな。」
そう呟きながら男は満足そうに立ち上がった。今日も静かな空間が男を満足させたようだ。
「終電まであと少しだ。急がないと。」
男は足早に出口に向かうと、何やらスタッフと揉めている女がいた。
「・・・・返金でしょ。警察呼びますよ。」
「・・・・できません。」
どうやら金を返せと揉めているようだ。映画が面白くなかったとか、音が聞こえなかったとか、難癖をつけて返金させたいのだろう。実にくだらない。私にとって映画の面白さは二の次だというのに。そんなことを考えながら歩いていると、女から呼び止められてしまった。
「ちょっとすいません。さっき5番のシアターにいた方ですよね。」
「そうですが」
「したら5番のシアターで音割れがあったことを証言してください。」
「?」
「お客様、申し訳ございません。こちらの方、5番で音声トラブルがあったと申しておりまして・・・。」
完全に巻き込まれてしまった。というかスタッフも巻き込むような発言するなよ・・・。しかし、そんなシーンに心当たりがない。まさか寝ていたのか。まあいい。とりあえず無難に答えてこの場を去ろう。
「心当たりはないですね。急いでるので失礼します。」
「あなたも映画館の味方ですか。もういいです。二人とも訴えます。」
「お客様、それはちょっと・・・」
どうやら帰してくれないようだ。腹が立ってきた私はこの場を収めることにした。
「ここに証拠がありますので、お二人で判断してください。」
男は得意げに言うと、鞄からビデオカメラを取り出した。
その瞬間、ビデオカメラが取り上げられ、男は警察に連れていかれた。
「爆音を流す映画館で音割れなんか起こるはずないだろうに・・・。うちの映画館も甘く見られたものだな。・・・というかあいつ本当に寝ていたのか。」
女はそう言うとタイムカードを切り、家路についた。
その道中、女は久しぶりに客席から見た映画の感想を噛み締めていた。
「やはり映画はレイトショーに限るな」
No more 〇画泥棒