第四話
エドワルドはアイーダが六歳の時からのお世話係だ。
執事見習いでもある彼が、アイーダのお世話係になったのには理由がある。
アイーダは公爵家の跡取り娘だ。
ロドリゲス公爵家をしっかり引っ張っていくためには、有能な部下が必要だった。
だからロドリゲス公爵は、若く見込みのあるエドワルドをアイーダのお世話係にしたのだ。
そのエドワルドが、娘の筋トレに付き合わされているとは、ロドリゲス公爵は全く気付いていなかった。
エドワルドが優秀だったからである。
おかげでアイーダは両親には秘密にしたまま、筋トレに励むことができた。
頭だけでなく体もしっかり鍛えた公爵令嬢であるアイーダは、細く引き締まったマッチョな体を手に入れた。
細く締まっていればマッチョバレしないかといえば、そうでもない。
なぜら、令嬢につきもののドレスは、全てが誂えものだからだ。
ドレスなどの採寸の時には、外部の者に体を見られることがある。
その時に相手が、
「あの……」
と困惑気味な視線を投げてきたときには、それなりの対応が必要だ。
そんなときのアイーダは、
え? 何か問題でも? 私にはさっぱり分かりませんわ。もしかしたら、生まれつきの体型ではなくて? もちろん、生まれつきの体型を揶揄するような失礼なことを言ったら……分かっていますわよね?
という無言の圧をかける。
アイーダにとって無言の圧をかけることは、赤子の手をひねるよりたやすい。
将来、ロドリゲス公爵家を継ぐアイーダにとっては、無言の圧も武器のうちだからだ。
賢く有能なエドワルドの指導により、アイーダは身も、心も、とても頑丈に育った。
とても良いことである。