第十八話 護衛騎士団見学
「こんにちは、お嬢さま」
アイーダに気付いたカリアスは、笑顔で汗をタオルで拭うとシャツを着た。
「こんにちは、カリアスさま」
アイーダは、礼儀正しく淑女の礼をとった。
もちろん淑女らしく、団員たちの体など見ないし、カリアスの体を盗み見たりなどしていない、などというはずもなく。
目ざとくササッと辺りを見回して、一番自分好みの体をしているのはカリアスだと確認した。
しかしアイーダが責めるような視線にさらされるようなことはない。
なぜなら彼女の隣で、エドワルドが団員たちをガン見していたからである。
ただならぬ雰囲気を感じたのか、団員たちは一人、また一人とシャツを羽織っていく。
アイーダたちに気付いた騎士団長は、汗を首にかけたタオルで拭いながら彼女たちのほうに近付いてきた。
「こんにちは、お嬢さま」
「こんにちは。突然ですが、見学させていただいても構いませんか?」
私が軽く頷く隣で、エドワルドが騎士団長に確認をとる。
「ご見学ですか? 事前にご連絡いただけたら準備をしておきましたのに」
「いえ、騎士団長。それでは素の状態を見られないですからね。お嬢さまは、普段のままの状態を見学されたいのですよ」
「ハハ、そうですか? では、私がご案内します。ちょっと準備してきますね」
エドワルドの説明に、騎士団長は笑みを浮かべると、カリアスを伴い、去っていった。
途中途中で、部下に何かを指示している。
エドワルドは団員たちをチロチロとガン見しながらアイーダに言う。
「こんな感じでよろしいですか? お嬢さま」
「そうね、エドワルド。でも普段通りは難しそうよ」
男所帯である団員たちにとっては、ドレス姿そのものが珍しいものだ。
だから、当然のようにアイーダは注目の的だった。
「やはり乗馬服にするか、姿を見せずに遠くから観察するほうがよかったのではないかしら?」
「いずれはそうされるでしょうけれど。最初はこれでよいと思いますよ」
アイーダと執事がコソコソ話していると、軽く身支度を整えた騎士団長とカリアスが連れ立って戻ってきた。
「では私がご案内します」
「よろしくお願いします」
騎士団長の言葉に、エドワルドが軽く会釈した。
カリアスと騎士団長は、鍛錬用のシャツとズボンにブーツを身に着けている。
エドワルドは執事服、アイーダは赤いドレスだ。
当然のようにアイーダの姿は目立つ。
周囲の注目はアイーダに集まっていたが、本人は気にならない。
屋敷内ではよくあることだし、今日は隣にカリアスがいる。
騎士団長を先頭に、アイーダとその隣にカリアス、そして後ろからエドワルドが付いていく。
(今日は、鍛錬中のカリアスさまを堪能することはできなさそうだけど……コレはコレでアリ!)
まずは鍛錬場の案内をされてたが、アイーダはカリアスのほうばかり見ていた。
それでいて、鍛錬場に置かれた器具などについて的確な質問をして騎士団長を驚かさせたりしていたのだが。
カリアスのことだけを見ていたアイーダが、それに気付くことはなかった。




