表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雄っぱい婚約で公爵令嬢が伯爵家三男と婚約したら国家の危機を招いて溺愛されるとは!  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/32

第十四話 婚約者の役割

「お父さま! これは一体、どういうことですの⁉」


 カリアスが護衛騎士団の寮に住むことを知ったアイーダは、父の書斎へと説明を求めてやってきた。

 机に向かって事務処理に追われていたサイモンは、顔を上げることなく仕事を続けている。


「なんだ、アイーダか。突然、何の話だい?」


 声だけで対応する父に、アイーダの苛立ちは高まった。


「とぼけないで、お父さま。カリアスさまのことよ。私の婚約者である彼が、なぜ護衛騎士団の寮なんかに住むことになったのですか⁉」

「ハハハ。あぁ、そのことか。だってカリアス君が、そっちの方がいいって言うんだもん」

「もん、じゃないですっ。ちっとも可愛くありませんからっ」


 呑気に答える父に対し、アイーダは苛立ちを隠さない。

 サイモンは、鷹揚な笑みを浮かべて、椅子に座ったままアイーダの方へ向き直った。


「ハハハ。そこはねぇ、アイーダ。カリアス君の戸惑いを受け止めてあげないと」

「戸惑い?」


 アイーダの自己肯定感は高い。

 見た目に関しては、派手な両親の特徴を引き継がなかったせいで、少々コンプレックスはあるものの、身分や財産など自分にくっついているものの価値について疑ったことはない。

 だから自分との婚約が褒美にはなっても、カリアスを戸惑わせることになるとは、欠片も考えてはいなかった。


「んー、アイーダには分からないかな。一介の護衛騎士が、公爵家の婿になるわけだ。そりゃ、戸惑うよ」

「それは出世とか、逆玉とか言われるものでは?」

「んっ、そうかもしれないが。誰もが歓迎するとは、限らないんだよ、アイーダ」

「えっ?」


 アイーダは心の底から驚いた。


「男性はね。自分の庇護下に女性を置くことを考えても、女性の庇護下に置かれることは考えないものだよ」


 そして父の言うことが、心底分からなかった。


「それを言ったら、元婚約者のナルシスさまはどうなりますか?」

「ん。アレは、まぁ、別のタイプだし。そもそもクズだ」

「ナルシスさまがクズであることには、同意いたしますが。私は、カリアスさまを庇護下に置くつもりなんてないです。私は、カリアスさまに守ってもらいたいですしっ」


 アイーダは、カリアスの逞しい体に守ってもらう自分を一瞬想像してうっとりした。

 一瞬ですら、うっとりなのだ。

 これが一生となったら、うっとりどころの騒ぎではない。


「まぁカリアス君が、実力でお前を手に入れていれば、話は違うかもしれないが。悪漢からお前を守るとか、戦で手柄を立てた褒賞とかなら、私だってこんな方法は取らないよ。でも偶然の出来事による婚約だからね。カリアス君は戸惑っているだろうし、信用できないのも分かるよ」


 アイーダは、首を傾げた。


「キチンと契約書も取り交わしましたのに?」

「婚約しようと、結婚しようと、契約書があろうと、破談になるのは世の常だ。金銭で補償しきれないものが、男にはあるからね」


 アイーダは、更に首を傾げた。


「それは何ですか?」

「男のプライドだよ」

「男のプライド? プライドなら女性にもありましてよ」


 アイーダはムッとして答えた。

 サイモンは曖昧に笑った。


「そりゃそうだけど。男性のソレは、傷つきやすいからね。警戒してるのだろう。分かってあげなさい」

「納得いたしかねます」


 サイモンは困ったような表情を浮かべた。


「お前は……昨日まで護衛騎士をしていた伯爵家の三男坊に、公爵令嬢のエスコートが上手く務まると思うかい?」

「あっ」


 立場が違えば受ける教育も違う。

 アイーダはカリアスとの婚約に浮かれるあまり、そのことを失念していた。


「私も彼を公爵家の護衛騎士などにするつもりはないが、いきなり婚約者の役割を果たしてもらおうとするのは、酷じゃないかな?」


 父に問われて、アイーダは渋々頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ